ル・アーヴルの靴みがき

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心をみがけば、奇跡はおこる。
マルセルは、愛妻と愛犬と3人暮らし。貧しいながらも、しあわせに暮らしていた。そんななか、妻が病に倒れーの、アフリカからの難民の少年をかくまうことになりーの・・・というおはなし。

原題:LE HAVRE
監督・脚本・プロデューサー:アキ・カウリスマキ
撮影:ティモ・サルミネン
編集:ティモ・リンナサロ


いやー、滋味あふれるとはこういうことか!ミニマムながら(だからこそ?)こころに染み入る、映画らしい良い映画でした。せりふや表情や演出に、余計な装飾はいっさいないのだけど、登場人物のふとしたまなざしや行動そのものが、そのひととなりを雄弁に語る。

例えば、冒頭仕事から帰ってきたマルセルを迎える様子や入院するまでの対応で、奥さんがどれだけ良妻でつつましくて我慢強いひとか、はっきりわかる。
また、すてきな描写もたくさんあって、例えば、今までマルセルがお見舞いに持って行っていた赤い花が、最後に病院に向かうときは、奥さんの思い出のワンピースに合わせた黄色い花になっていたりして、いちいち小粋でニクい。

「古き良き人々」ばかりが登場し、ともすれば「ご都合主義」にもなりかねない展開でありながら、これを「奇跡」として観られるのは、このすみずみまでゆきとどいた配慮と心配りが屋台骨にあるからだと思う。1日1回観たら、性格良くなりそうだわー。難民問題にしても、サグいものをサグく撮ればいいってもんじゃないんだ。『SR3』を観たときにも感じたことだけど。

すきな映画を観ると、その映画のせりふやしぐさがわたしのなかで流行るのだけど、今回は握手だな―。しばらくはことあるごとに、握手していきたい!


愛犬ライカの反応からも、マルセルがどういう飼い主なのかすっとわかるよ!


★★★★