LOVE LIFE


孤独を抱いて、自由になる。

監督・脚本・編集:深田晃司
撮影:山本英夫
編集:シルビー・ラジェ
美術:渡辺大
音楽:オリビエ・ゴワナール
主題歌:矢野顕子


人生絶望予行演習映画を撮る深田晃司監督。今回も冒頭から異様な手際の良さで日常に潜む不穏や地獄を描いていく。不意に訪れる思わず悲鳴がもれてしまうような悲劇。そこから、理屈や正しさやモラルでははかれない、人間の生理的な感情や衝動が噴出していく。韓国が出てくるのを抜きにしても、イ・チャンドン的な韓国映画のバランスや味わいを感じた。

「ないわー」と思ったキャラが「意外とこういうところは好きかも」に転じたり、観客も主観を開放される気がする。人によって好き/嫌い、理解できる/できないキャラは全然ちがうと思う。例えば、わたしは義母がベランダで煙草をふかしながら語った話が好き。妙子やシンジは自分にあまり似たところはないのだけれど、なんとなく行動原理はわかるし、ある死に対して近いテンションでいてくれる存在を求めてしまう気持ちもわかる。夫の二郎が一番嫌いなのだけれど、それはどうしてか…と突き詰めていくと、おそらく自分に二郎的なところがあるからだと思う。それを突きつけられるのはけっこう気まずい。ただ、わりとどの登場人物にも寄り添える余地があり、どの登場人物もすぐに非を認めて謝れるところが良かった。

中でもやはり主人公を演じた木村文乃さんの実在感はすばらしかった。なぜか雨のなか韓国歌謡で踊るに至ってしまった彼女の後ろ姿にどうしても好感を持ってしまう。飛び方や着地も含めて『寝ても覚めても』にとても近いと感じた。行くところまで行き着いてしまった男女二人を見守る目線の優しさが、余韻として深く残る映画だった。


★★★★