ジュリア(s)


あの時あの場所で違う選択をしていたらー?
パリ・アムステルダム・ベルリン・NY
名曲の数々で彩られる並行世界の4つの人生


原題:LE TOURBILLON DE LA VIE
監督:オリビエ・トレイナー
脚本:カミーユ・トレイナー、オリビエ・トレイナー
撮影:ロラン・タニー
編集:バレリー・ドゥセーヌ
美術:フィリップ・シフル
衣装:マリ=ロール・ラッソン
音楽:ラファエル・トレイナー


公開当時、「アナザー『エブエブ』」的な評をちらほら見かけて、ずっと気になっていた作品。タイムリープパラレルワールドものはどうしても見逃せない!

とても丁寧で、よく練られた佳作だった。異なる可能性を同時並行で描いていくのだけれど、ジュリアの衣装やヘアメイク、表情などで、置かれている状況がスッと入ってくるよう巧みに演出されている。分岐の見せ方やキーアイテムを駆使した構成など、観客の興味を引っぱりながら混乱は避けるような工夫も上手い。

新しいなと思ったのは、『エブエブ』『アバウト・タイム』きみがぼくを見つけた日』など、タイムリープパラレルワールドものはだいたい主要人物を固定してドラマを描くと思うのだが、この作品は容赦なくパートナーが(子どもも!)変わるところ。「人生は偶然と選択の積み重ね」ということの基本は「個人」であり、ジュリアの根本に変わらずにあるのは「音楽への情熱」だと示されるのは、いかにもフランスっぽい!!!と思いました。

そして、分岐点で「うまくいかなかった」ことが長い目で見ると良い結果に転じているのもおもしろかった。『アバウト・タイム』であれば修正されてしまうであろう「ベルリン行き」や「コンクール」といったイベントが、後々のジュリアに及ぼす影響が味わい深い。ジェーン・スーさんが言う「自分が選んだ道を正解にしていくしかない」を、ジュリアたちの姿から感じる。

ものすごく平たく言ってしまうと、人生なにかを得たり失ったり!良いことも悪いことも起こる!けど、人間の根本が変わらない限り結果はトントン!至極真っ当な「人生」についての映画だったと思う。ただ、やはりエモーショナルというよりテクニカルな印象が残った。タイムリープパラレルワールドものでは、正論を飛び越えるなにかを観たいと思っているのかも…という気は少ししました。
あと、個人的には親権取られた世界線のジュリアが気の毒すぎて…。ジュリアならもうちょいやれるだろ!がんばれ!あとジュリアの友人の育児愚痴が解像度高すぎて……www


★★★★