エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス


ようこそ、最先端のカオスへ。
マルチバースとカンフーで世界を救え?!
A24が贈る空前絶後のアクション・エンターテイメント、降臨。
第95回アカデミー作品賞/監督賞/脚本賞/主演女優賞/助演男優賞助演女優賞編集賞

原題:EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE
監督・脚本・製作:ダニエル・クワンダニエル・シャイナート
撮影:ラーキン・サイプル
編集:ポール・ロジャーズ
プロダクションデザイン:ジェイソン・キスヴァーデイ
衣装:シャーリー・クラタ
音楽:サン・ラックス


これはもうずーーーっと前から「絶対に!この映画は!いつメンで観たい!(そしてそのあといっしょにおいしいごはんとお酒へなだれこみたい!)」と思っていたので、夢が叶ってうれしかったーーー!年末のシネマランキング会をはじめ、ちょくちょくLINEでやり取りしているのでそんなに間が空いているとは思わなかったけれど、対面で会うのは『エターナルズ』以来だった。そんな待ちに待ったイベント。いつメンとクリスチアノ前に。


家族/国籍/性別/環境…いろんな事情があるのはわかる!わかるけど"Be Kind."(by ヴォネガット!)という愚直なまでにシンプルなメッセージを、ポップカルチャーの洪水とブッ飛んだ世界観でブレインウォッシュする最高な映画。『マトリックス』で始まり『マグノリア』で終わる映画なんて愛するしかない……!

まず現実が平凡すぎて良い。金に頭を悩ませ忙しすぎて優しい夫に八ツ当たりし娘の話に「あとにして」と言ってしまうワーママ…わたしだよ!もうこの時点で完全に狙い撃ちされててむり。こんなつまらないことがなかなか変えられないのが現実なのだが、映画ではつよくてうつくしいミシェル・ヨーがカンフーと愛で虚無的空洞(ベーグル!)からみんなを救い倒していてむせび泣いた。というかもうミシェル・ヨーがカンフーポーズきめたときから泣いてた。

御年60才ですってよ?尊すぎるだろ。わたしの目標はバレエを習い続けられるくらいには元気なおばあちゃんなので、本当にあこがれでしかない。アジア系中年女性の星としてスクリーンで主役を張るに至るまでがんばり続けてくれて、本当にありがとうございます。


そして、イケ散らかしたり泣きべそかいたりと七変化なキー・ホイ・クァンの魅力大爆発!Toxic Masculinityとは真逆の、新時代のパパ像としてもとても良かった。彼のバックグラウンドとこの映画を経ての大躍進が、映画と併せて3Dのように立体で見え、完全に現実がマルチバースを引き寄せていて、すごい映画体験だと思った。


ちがうバースの描写も、秘められた自分の可能性にとどまらず、(今は敵対しているかもしれない)他者の可能性や関係性にまで広がっていて、優しかった。他者との時間はすべてが最高というわけにはいかないけれど、ほんの少しでもかけがえのない時間があれば一緒にいる意味がある…というような人生観も感じられてぐっときた。

brutus.jp


くゥ……ダニエルズあざといくらいアイドル性高くてくやしい。画像検索してしまう。


あとは、思いもしなかった収穫として、日常的にわたしが陥りやすいマイナス思考を軽くする助けになるような描写が多かったこと。心に穴を感じたらベーグルだと思えばいいし、やぶれかぶれになったら心の中でエヴリンにガラスを割らせるし、娘がかんしゃくを起こしたら崖から転がり落ちそうな石を思い浮かべる。中でもエヴリンの話を聞いていないさまがわたしの娘にそっくりで、「娘もバース・ジャンプしてるのかな?」と思い至ったのは、個人的にはかなりの学びだった。*1


★★★★★

*1:初期の設定では、エヴリンはADHDゆえに別の世界に入っていけるというアイデアだったとのこと