甘さひかえめ。
新世代をブチ抜く、シスター・ハード・ボイルド・アクション!
原題:GUNPOWDER MILKSHAKE
監督・脚本:ナヴォット・パプシャド
脚本:エフード・ラフスキ
撮影監督:マイケル・セレシン
編集:ニコラス・デ・トス
美術デザイン:デヴィッド・ショイネマン
衣装デザイン:ルイーズ・フログリー
音楽:フランク・イルフマン
スタント&ファイトコーディネーター:ローラン・デミアノフ
シンプルすぎる物語で、ストーリー運びもちょっとちぐはぐだったりするんだけど、それでも最高ポイントだらけで加点してもしきれないくらいだった。正直、ド頭の母娘が向かい合ってミルクシェイクを飲むシーンからもう感極まってしまった。
父子だと殺したり乗り越えたりしなければいけないのが「物語」だけど、この映画は母娘を相棒にしてしまう。
180cmの女殺し屋、中年女性主体のキャスト、ゆとりあるパンツルックでもかっこいい衣装(スカートや制服は偽装!)、民主主義による動議可決、家父長制や復讐の連鎖を次の世代に残さない、力技でも男に勝つ、そしてミシェル・ヨーのうつくしい斜め後ろ顔ーーー!
図書館でのアクションがピークで、ダイナーでの決闘は蛇足という感想もちらほら見かけたんだけど、絶対に要ると思います!今までパンツルックだった女たちが「見くびられ」の象徴であるウェイトレスの衣装や男たちが決めたルールを逆手に取って勝つ、男たちの後始末に送り込まれてきた女たちが女の後始末を引き受ける、という意味がある。なおかつ自分のケツを拭こうとして力が及ばない若者を助ける(おそらく彼女たちの時代には与えられなかったであろう救いの手。f**k自助!)という描写で、レジェンドたちへのリスペクトも示していると思う。
「女こども」で括られなめられてきた「子ども」をめちゃくちゃ対等に扱っているのも良かった。働いている女にとって子どもはあたりまえに戦闘要員だ。子どもを助手席に乗せない。2人でポルシェの運転席に座る。メタファーつよ!
それでいて見せたくない/聞かせたくないものから子どもを守る描写も効いている。エミリーにヘッドホンをつけるよう促すカーラ・グギーノの"Can you do that for me?"という頼み方には思わず泣いてしまった。命令調でも「for you」でもない。最大限子どもの意思を尊重しようとする姿勢。
なにしろ図書館が女たちのセーフスペースかつ武器庫で、ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』に銃が隠されているなんて!実際にスクリーンに映し出されているのを観たら、その何重もの意味にぶん殴られて泣いた。
なんと監督は「脚本に特定のメッセージを込めたつもりはない」と言っているんだけど、そんなことある!?汲まざるを得ないでしょ!
今までアクション映画での「女こども」の描かれ方のどこにストレスを感じていたかがよくわかる映画なので、逆に男性が観たらストレスを感じるのでは…という気もしたけど。鑑賞中ずっと頭の片隅で「なぜこんなにストレスなく観られるのか」ということを考えてはまた泣いた。
というか、わたしが感じたこと、ここ↓にほぼ書いてあった…。すばらしい批評です!
★★★★★