コーダ あいのうた


家族の中でたった一人 健聴者である少女は、「歌うこと」を夢みた。
聞こえない耳に届く最高にイカした歌声が、今日、世界の色を塗り替える。


原題:CODA
監督・脚本:シアン・ヘダー
撮影監督:パウラ・ウイドブロ
編集:ジェロード・ブリッソン
プロダクションデザイナー:ダイアン・リーダーマン
衣装:ブレンダ・アバンダンドロ
コンポーザー:マリウス・デ・ヴリーズ
音楽プロデューサー:ニコライ・バクスター


すごく良かったんだけど、期待しすぎた面もあったかなー!というのが率直な感想。2015年に観たきりで今回とくに復習もしなかったオリジナル 『エール!』の印象が思った以上に鮮烈に清々しく自分の中に残っていて……。「7年前にこれ撮ってたのもっと評価されてもよいのでは??」とひるがえって『エール!』の評価を上げることになりました。とにかく復習もしてないので、ぼんやりした感想で申し訳ないのですが……。

『コーダ』は『エール!』をとてもていねいにブラッシュアップさせている印象で、『エール!』と比べても洗練されているし、メッセージや映画としての輪郭がはっきりし整っていると思うのだけれど、それらはすべて聴者の観客に向けた演出な気がして…。タイトルにも象徴されるように『エール!』の方がこの家族を「ふつう」の家族として捉えているようなフラットさ・抜けの良さがあるような気がしてすき。一家の生業を農業から漁業に変更したことでより映画としてはわかりやすくなったけれど、「それってなんのため?」という気はしてしまった。
あと2022年のいま、母が「健聴だとわかったときがっかりした」と家庭内マイノリティの娘に語るのはがっつりアウトだと思う*1し、福祉や周囲の人間等の意識はもうちょっとアップデートされていてほしい気もした。

とはいえ、『エール!』で感動した歌描写は見事に継承されていて、コンサート→父との対話→オーディションとそれぞれに工夫された演出と登場人物たちの心境の変化、そしてすばらしいパフォーマンスが涙をしぼりとっていくので、『エール!』を知らずに観ていたらもっともっと感動できただろうな、とも思った。


『エール!』になくてぐっときたポイントは、お兄ちゃんかな。『シング・ストリート』のお兄ちゃんを彷彿とさせるような人物像にはどうしても弱くて……。『シング・ストリート』のフェルディア・ウォルシュ=ピーロが出てるの確信犯か?と思うくらい(笑)


★★★

*1:ろう者の娘にそう語るのがアウトなように聴者の娘にそう語るのも同じことだと思うし、感動げなシーンとして描かれていたけれど、個人的にはこの映画屈指の残念なシーンだと思う