赤い月の夜、カノジョは突然覚醒した。
原題:MONA LISA AND THE BLOOD MOON
監督・脚本:アナ・リリー・アミールポアー
撮影:パベウ・ポゴジェルスキ
編集:テイラー・レビ
美術:ブランドン・トナー=コノリー
衣装:ナタリー・オブライエン
音楽:ダニエル・ルピ
うわー!この監督のセンスすごくすごく好き!!!メインビジュアルや「次世代のタランティーノ」という煽りから想像されるよりはるかに地味で小ぢんまりとした作品なのだけれど。
まず、「おれが考えた最強の女の子!」をチョン・ジョンソに演じさせてるの最高最高最高!『バーニング』でも圧倒的だった存在感と佇まいを堪能できる。
チョン・ジョンソはオファーを受けた後、自費で監督に会いに行きそのまま一週間合宿したそうで、二人ともダンス・ミュージックが好きで意気投合したとのこと。その様子遠くから見守らせてほしい…。そんなエピソードが本当にしっくりくる、音楽が最高な映画でもあった。めちゃくちゃ踊りたくなった映画、久しぶりに観たなー。
監督イケてる!
そして、厨二設定ぶちかましておきながら、起こるできごとは妙にほっこり。不穏な雰囲気を漂わせてたむろするパンクスやDJはみな面倒見が良くて親切。最強能力を使っておこなう犯罪やいじめっ子への制裁のしょぼさ。捜査はなぜかずっと怪我人が担当している。スーパーハイヒールを履いたストリッパーと杖をついた警察のスローすぎるチェイスシーンの腰砕け感。無色透明なモナ・リザが相対する人間の映し鏡のように変わるのがおもしろかった。
ケイト・ハドソンが演じたボニー・ベルのキャラクターもとても良かった。筋が通ってるところと小ずるいところが並存していて、血が通っている。この手のキャラクターは過度に神聖視されたりしがちだけど、息子にひどいこと言われたり、モナに一旦嫌われたり、手痛すぎるしっぺ返しを食らったりするのもリアルだった。*1
ぐっとくるシーンも光っていた。モナとチャーリーのハッシングのシーンは忘れられない。子どもながらに音楽で感情を解放することを知っていて、その術をアウトサイダーに授けることの尊さよ。ファズがくれたTシャツ、目玉焼き、餞別も。監督は「うっかりわたしの理想の男性を作ってしまったのかもしれない(笑)」と語っているけれど、そんな監督が好きだよ!
またひとり、次回作がとても楽しみな監督と出会ってしまった!
★★★★