扉をたたく人

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妻に先立たれ、やる気レスな人生を送っていた大学教授ウォルターが、シリアの移民青年タレクと出会い、ジャンベを通してこころを開いていく。
あらすじを書いてみると、『グラン・トリノ』っぽいか。

原題:THE VISITOR
監督・脚本:トーマス・マッカーシー
音楽:ヤン・A・P・カチュマレク


わたしはジャンベを習っているので、これは観なあかん!ということで。
オスカー候補になったリチャード・ジェンキンスのていねいかつ軽やかな演技で、ウォルターが変わっていく様子がここちいい。こっそりタレクのジャンベをさわってみるところからはじまって、公園デビューを決め、どんどんジャンベバックを持つ姿が板についてくる。拘置所の机をジャンベに見立てて叩くシーンとかぐっときました。

しかしこの映画、意外にド渋で。ジャンベのイメージからか、ハッピー&ハートウォーミングな映画を想像していたのですが、相当ビター。9.11以降の硬直したアメリカの空気感とあわせて、壁に対する無力感・行き場のないいきどおりがひしひしと迫ってきて、かなりやるせなくなりました。わたしが習ってきた先生たちをはじめ、ジャンベ奏者って本当にオープンマインドで陽気なひとが多いので、なおさらやりきれない。「このひとがわるいひとなはずないですってば!わたしが保証します!」ですめばかんたんなのにと思う。

恋愛モノとしてもなかなか渋くてよい作品だと思いました。おとなっぽくて、なにしろ上品なところがよかった。
そういえば客層も中高年の方が多かったです。


★★★