母さん、なんで僕を生んだのですか?
あの男の血をひく僕を―。
昭和63年、山口県下関市の「川辺」と呼ばれる場所で繰り広げられる家族の愛憎劇。義手の母と暴力的な性癖を持つ父とその愛人と。
監督:青山真治
脚本:荒井晴彦
撮影:今井孝博
編集:田巻源太
美術:清水剛
音楽:山田勳生 / 青山真治
原作:田中慎弥『共喰い』(第146回芥川賞)
思っきし湿度が高そうなやつ観るぞ〜と思って打ちに行ったのですが、ちがうベクトルでやばい感じでした。途中すごく違和感を感じて、鑑賞後に原作を読んだのですが、やっぱりそこが丸々映画オリジナルの部分でした。*1原作とはかなりちがう趣き。
原作が、極端に閉鎖的で、他人には伺い知ることのできない超個人的な男女間の業の深さを感じさせるのに比べて、映画は、もっと普遍的な男性の弱さ・女性の強さにフォーカスしているように感じました。自分はやっぱり原作の濃さがすきかな、と。映画のほうは、地域的にも登場人物的にもフォーカスする部分を広げているし、田舎仕立ての胸やけする味つけが垢抜けてしまった印象。
とはいえ、画面のぬめっとした質感や「川辺」の描き方はさすがの不穏さで、思う存分背筋をざわざわさせられました。菅田将暉 &木下美咲カップルは、題材的に仕方ないけどどうしても『ヒミズ』 の染谷将太&二階堂ふみと比べながら、観てしまった。
あと、本筋とはまったく関係ないけれど、一番いやだったのは、団地に住んでいるキ印娼婦の足が、外反母趾のかたちも塗ってるネイルの色も、自分にそっくりだったこと。あれはちょっと生理的に忘れがたいな。
★★★
*1:それが悪いという意味ではなくて