ヒミズ

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「生きろ」と、君が言った。
15才、絶望と狂気のボーイ・ミーツ・ガール。

監督・脚本:園子温
撮影:谷川創平
編集:伊藤潤一
美術:松塚隆史
音楽:原田智英
原作:古谷実ヒミズ


結局園監督すきじゃないし、この作品は酷評ばかり聞くし、原作も読んでないし、機会があったら観るか〜くらいに思っていたのですが、ふらっと観る機会に恵まれてしまい。率直に言って、「あれ?悪くないじゃん??」っていう。それどころか園映画の中では相当上にくるかも…?
てかもう園映画ってほぼいっしょなので、あとはキャストとかムードとかの好みの問題になってくる気もするのです。この作品の批判もわりと「もともと園映画ってそうだったじゃん!」と思う意見が多くて、観客が作風に飽きてきて粗が目立つようになったのが大きいのでは?とか思ってしまう。自分が熱心な観客じゃないからかもしれないけど。

震災描写が本編と有機的にリンクしてないかげんとかも観るひとによっては噴飯ものだと思うのだけど、ラスト改変のエクスキューズと思うと、……という気もするし。大雑把な手つきや芝居がかった演出、エゴと自己中の見本市も中学生が主人公ということもあって、わたしはなんか今回許せました。なにより役者陣が文句なしに輝いているし(ひさしぶりの窪塚ゾーンに不覚にもわくわくさせられてしまったw)、すべての粗を超えて、ぐっとくる瞬間が何度かあって。

わたしのきらいな「できすぎ女子」描写も、そもそも古谷実の描く女の子がそうだから、なあ。「こんな聖母みたいな女の子が自分を全肯定してくれたら、そら言うことないでしょうよ!」という舌打ちがありつつも、それを超えてキャラが魅力的だったりするし(南雲さん…)。誰が茶沢景子に「がんばれー!」と言ってやるんだ、とせつなくなりつつも。

住田と茶沢をこころのなかで応援してしまったこと、このふたりのサッドエンドをみたくないと思ってしまった時点で、わたしの負けな気がする。誰といっしょに観るかによっても、だいぶ感触が変わるような気がします。
すくなくとも、わたしは園監督がこのラストを選んだのは良かった。1週間くらいは「住田ー、がんばれー!」って言いながら走るあそびをたのしみます。


★★★