線は、僕を描く


涙をぬぐい、心を描けー
ちはやふる』の製作陣が新たに挑む”水墨画”の世界。
青春映画の金字塔、再び。

監督・脚本:小泉徳宏
脚本:片岡翔
撮影:安藤広樹
美術:五辻圭
スタイリスト:新崎みのり
VFXプロデューサー:赤羽智史、高玉亮
編集:穗垣順之助
水墨画監修:小林東雲
音楽:横山克
主題歌:yama
原作:砥上裕將


『ちはやふる』と比べると地味な映画なのですが、とても良かったし、青春映画としてとても新しかった。小泉監督はその文化の良さを誠実かつポップに描きながら、その本質を射抜くのが本当に上手いと思う。本作は「水墨画」をモチーフにしたことで、「生死」にまで射程を伸ばした老成した青春映画になっていると思う。

まず、のっけから三浦友和のライブドローイングの迫力にぐっと惹き込まれる。『ちはやふる』と同じく、三浦友和をはじめキャスティングがすばらしい。キャラに説得力があり、余計な説明をしなくても伝わる。スタイリングも初見でパッとキャラがわかるんだけど、やりすぎない上品な線を保っていて、『ちはやふる』につづきスタイリストを担当された新崎みのりさんの力を感じる。


そして、肝となる水墨画表現がこれまた良い。『メッセージ』にインスパイアされたという描画表現がうつくしい。墨の濃淡と余白で描かれる白と黒の世界、墨と水が混じりあって紙の上を流れる様子を観ているだけで、落ち着くし心が洗われる。


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この「白と黒」がメタファーとして徹底されていて、その白と黒の中に色がついて見える時、冒頭霜介が何を思って画に涙したのかがわかる時、鳥肌が立つような感動を呼ぶ。水墨画で描くのは、目の前の花ではなく心の中の花。

天災が多い日本において、自然を描く「水墨画」を通して再生を描いてみせる。しかも恋愛抜きの青春映画として。その意図がすでに尊いと思います。小泉監督、次回作も楽しみにお待ちしております。


★★★★