パラノイドパーク

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どうして僕は人を殺す事になったのだろう。
オレゴン州ポートランド。誤ってひとを死なせてしまった16才の少年のお話。「作文が苦手」な彼が書く、日記的な手紙に沿って時間軸をゆらしながら描いている。

原題:PARANOID PARK
監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
撮影:クリストファー・ドイル / レイン・キャシー
原作:ブレイク・ニルソン


今週は仕事が落ち着いているので、やっと代休をとりました。武蔵野市から渋谷まで愛機でビューン。天気がよくてきもちよかった。ひとりで映画を観るのはひさしぶりだ。

もう最初から最後まで小鳩のような胸を痛めながら、観ました。心臓をわしづかみにされて、息ができず。死ぬかと思いました。わたしは16のとき、映画とは似ても似つかぬ平穏な日々を送っていたけど、やっぱり同じに16才だったなあとも思いました。でも不思議に安らかな印象が残る。おとなになる一歩手前のひとたちへの祈りのような映画でした。

先日の『マイ・ブルーベリー・ナイツ』で見られなかったクリストファー・ドイルの撮影が秀逸。家族・彼女とのかみあわない会話。自分の身の上に起きたこととは思えないような、非日常的なできごと。全体的に主人公の周りがぼんやりブレた撮影になっていて、10代ならではの、自分と外界のあいだに感じられるうすい膜みたいなものが全編にわたって表現されていたと思います。したたかさと繊細さ。鈍さと過敏さ。そのバランスの不安定さ。主演のゲイブ・ネヴァンスもおおげさな演技は一切なくて、微妙な表情の変化しか見せないけど、そのゆらぎがうまく写しとられていた。とにかく息をのむような映像が多かった。
とくにわたしは今すきなひとがちょうすべってるひとなので、「スケーターをこんなにすてきっぽく撮るのはかんべんしてください」と。思った以上に美しいスケートシーンが多くて、まいりました。

音楽もよかったなあ。妙にコミカルだったり、牧歌的だったり、荘厳だったり。雑多だけど、場面にぴたりと合っていて、センスに舌を巻きました。

観おわったあと、しばらくぼーっとしてしまいました。トイレに行ったら、目の焦点が合ってないかんじで、やべーと思いました。ちょっと休んだほうがいいなと思ったけど、行きたいところも思いつかず、チャリに乗り、西永福あたりでようやく正気を取り戻してきた感じでした。そんな映画です。


★★★★★