キックアス

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正義の心で悪をKILL
なぜ誰もスーパーヒーローになりたがらない?さえないボンクラ青年デイヴが一念発起。ひとりコスチュームを着て自警活動をスタートするが・・・というお話。

原題:KICK-ASS
監督・脚本・製作:マシュー・ヴォーン
製作:ブラッド・ピット / クリス・サイキエル
脚本:ジェーン・ゴールドマン
撮影:ベン・デイヴィス
編集:ピエトロ・スカリア / ジョン・ハリス / エディ・ハミルトン
音楽:ジョン・マーフィ / ヘンリー・ジャックマン / マリウス・デ・ヴリーズ / アイラン・エシュケリ
原作:マーク・ミラー / ジョン・S・ロミタ・Jr『KICK-ASS(キックアス)』


大評判の本作で今年の映画は観納め。
立ち見が出るのも納得なおもしろさで、ぜひ映画館で観ていただきたいです。
とにかくヒットガールが最高ぐっときた!彼女が大暴れするシーンではだいすきなタランティーノ映画に似た言葉では言い表せない原始的な興奮を味わい、脳内麻薬がだだ漏れ。ヒットガールばっかりもう1回観たい。

基本的にはとってもたのしかったのですが、原作を買って確認してしまったほど気になる点があったのも事実。まぁ原作買うくらいだから、相当好きな作品なんですが。


1.主人公デイヴの心情と成長
とにかく主人公デイヴにのれなかった。「こいつなに考えてんだ?」って気になってしまうくらい各行動の原理がわからない。とくにヒットガールに「おまえのせいで・・・」って言葉にされてやっと自分の過失に気づくくだりなんか、あまりの無神経さに嫌悪感が先に立った。あと、デイヴにのっかってギーク目線でストーリーを追ってたのに、途中でデイヴがあっさり脱童貞して、「なんだ・・・結局ヤレてるし」ってうっかり裏切られた感を味わってしまったのもちょう心外。「童貞を守る!」彼の前でいちゃつく様子もヤなやつじゃね?とか思っちゃいました。まぁ言うても、おいしいとこどりのラストではやっぱり興奮はしちゃうんだけども。

2.ヒットガールとビッグダディの関係
ビッグダディの娘への深い愛が描かれているわりに、どうして娘を修羅道へ引きずりこんだかの描写が浅すぎて納得いかず。娘を愛していれば、復讐はまず自分独りでやろうとするのが筋。このへんは原作で明かされる真実が映画では隠されたままなのでしかたないけど。あとはなんといってもニコラス・ケイジというひとへの信頼感がパないので、「まぁあいつがやることなら」と無理やり納得させられた感はあります。しかしどちらにしても結局ヒットガールが父の呪縛から脱せられないのは致命的。女子的にはいかんともしがたい屈辱。

3.暴力の重さについて
R-15のゆかいな暴力シーンが炸裂する本作ですが、あまりにその扱いが軽い。暴力を受けたあと恐怖で体が動かなくなるとか、大量の惨殺死体を見てゲロ吐くとか肉食べれなくなるとか、そういう描写が一切ないので逆にこわくなる。とくにデイヴがデビュー戦で重体になったあと、トラウマ(もしくはそれを凌駕する狂気)の描写がないとやっぱりデイヴにはのれないと思う。


この3つのポイントについては、原作を読むとあらかた解消されます。
原作は「アメコミイズムに取り憑かれた者の狂気」を徹底的に描いているので、それを濁してストーリーをなぞるとどうしても腑におちない部分が出てくる。けど原作のままだと、映画の爽快感が消えるから改変はしかたないのか。なんのかんのと書きましたが、おもしろかったし、もう1回観たいんだ!


★★★