「今」を弾丸のように撃ち抜く、真実の物語―
原題:THE POST
監督・製作:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:リズ・ハンナ / ジョシュ・シンガー
撮影監督:ヤヌス・カミンスキー
編集:マイケル・カーン / サラ・ブロシャー
プロダクションデザイン:リック・カーター
音楽:ジョン・ウィリアムズ
トランプ政権発足に危機感を持ち、9ヶ月の早撮りをやってのけた、というスピルバーグの「同時上映」案件。民主党支持のスピルバーグらしい。財務省&山口メンバーのセクハラ問題にまつわる事象に思いのほかがっつり削られ、フェミモードに突入したわたしは、またしても神頼みに走ったのであった。
早撮りならではのラフさ、熱気、スピード感で、「報道の自由」を描きつつ、こと「女性の進出」に関する描写のツボの押さえ方の強さ・的確さは尋常ではなく。やはり神!神が女性のために創りたもうた映画!
誰からも「ふさわしくない」と思われているという無力感や劣等感。女が政治に口を出す時代ではない中、男社会に足を踏み入れる時の威圧感。その中でも腐らずに、誰も読まないような書類にまで目を通す粛々とした仕事。彼女の勇気と決断の重さを「海賊」に説いてみせる、海賊の妻。娘が書いてくれた所信メモ。地道な努力が実を結び、自分の理論に一本筋を通せた瞬間。そして回りだす輪転機。裁判前、ひそかなエールを送る敵側で年下の同志。裁判後、静かに目線だけで賞賛を送る女性たち。判決文を朗々と伝えあげる記者女性。―神に完全に応援されてるし、勇気わくよこりゃ!
道を拓く女性という面で、『ドリーム』や『20センチュリー・ウーマン』 を思い出すけど、本人にはそんな気はなかったのに、結果的に大きく尊い結果を成す、というところがちがってこれもまたいいなと思いました。
あとは、穿った見方かもしれないけど、デモの描き方もおもしろかった。デモ隊が歌っている一方で、記者たちが奔走していたり。デモ隊のせいで裁判に遅れてしまった女性の描写があったり。声を上げることはもちろん大事だけど、結局事態を変えるのは、己の持ち場で自分にできる仕事に全力で向き合う人なのかな、と思いました。そういう意味では『シン・ゴジラ』や『この世界の片隅に』を思い出したりもしました。
★★★★