ボーはおそれている


ママ、きがへんになりそうです。

原題:BEAU IS AFRAID
監督・脚本:アリ・アスター
撮影:パヴェウ・ポゴジェルスキ
編集:ルシアン・ジョンストン
衣装:アリス・バビッジ
美術:フィオナ・クロンビー
音楽:ボビー・クルリック


もっと早く行きたかったんだけど、家庭内での胃腸炎~インフルエンザのリレーで2月はほとんどつぶれてしまいました…。夫とわたしは映画の好みが全くちがうのですが、気づくとアリ・アスターは2人で観に行っています。

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さて、アリ・アスターの新作はいつもの如く、トラウマ映画でありセラピー映画という唯一無二の作家性・全開。今回はコメディで、母の支配とユダヤ教の戒律というモチーフが明確にあり、あまり緊張せずに楽しめた。めちゃくちゃ笑った。

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ユダヤの戒律をある程度知っていた方がよりおもしろがれると思う。


母(=宗教)の教義に沿えず、ひどい目に遭い続けるボーを観ているとなぜだか不思議と、支配なんてクソくらえだし、戒律なんて従わなくて良し!という気持ちがわいてくる。これは無宗教な日本人ならではの味わいだと思うのだけれど、内にいる者にとっては逆らえない絶対の教えでも、外から見れば守る意味もない理不尽なものに見えるという点で同じようなものに思えてくる。

今回毒親側の心情も吐露され、親である自分はちょっとだけ気持ちがわかる部分もなくはない。そもそも親子という関係性はエグい。お互いを選べず、絶対的な力関係があり、親は子を支配し、子は親から(ある種)搾取する。そしてお互いを罪悪感で縛り合う。しかし、どんな親子にもそういう面があると思うと、絶望する反面諦めもつくし気が楽になるのもたしかだ。

179分かけて壮大なスケールで繰り広げられる親子プロレスを見届けると、その不毛さは骨身にしみる。ボーが母に叱られてるとき、ピィピィさえずってるようにしか認知してないさま、わたしもされてそうでこわいよ……。あと、ホアキン・フェニックスがめそめそするさまが、すごく子どもっぽくてよかった。


それにしても、マライアの超名曲(なんなら甘酢な思い出すらある)をあんな使い方(しかも天丼)してくれちゃってどうしてくれるの……!!!一生忘れられないんだが!!!マライア許諾すんなしwww

わたしはアリ・アスター作品の祝祭感が大好きなのですが、今作にはそれはあまりなかったのがちょっと残念だった。次作はまたホアキンと組んでウェスタン・ノワールらしいけど、いつかまた祝祭みをください……。



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★★★★