ハート・ロッカー


永遠を思わせる戦場 刹那を生きる男たち・・・
爆発物処理班@イラクを描く
Hurt Locker=究極の苦痛に晒される場所、いるだけで心が痛む場所
第82回アカデミー作品賞/監督賞/脚本賞
キャスリン・ビグローは女性初の監督賞受賞

原題:THE HURT LOCKER
監督・製作:キャスリン・ビグロー
脚本・製作:マーク・ボール
音楽:マルコ・ベルトラミ / バック・サンダース


いろんな批評を聞いたり見たりしていて思ったのは、すごくいろいろな取りかたができる映画だなあ、ということ。もちろん大筋のテーマとか雰囲気とかは共通なんだけど、ひとによって反応するポイント、受ける印象はずいぶんちがうみたいで、おもしろい。客席は中年男性率高し!

戦争について描かれた映画にもかかわらず、わたしが肝心の戦争について思ったことは、「こんな状態にわたしは耐えられそうにないな」とか「平和っていいな」とかその程度(ヒドイ)ののんきさで、1番印象に残ったのはまったく戦争とは関係ないところにあったりして。

それは、爆弾処理班としての任務を終えた主人公が帰国して、日常生活に戻ったときの描写。スーパーマーケットにたくさんの種類のシリアルがずらりと並んだ様子。その豊かで平和な日常を象徴する一コマが、ものすごく異様で不穏な目線で切り取られたあとに、主人公が自分の赤ん坊に語りかけるシーンが挿入される。「ちいさいころはすきなものがいくつもあったけど、おとうさんにはもう1つしかない」ー。なにかに魂を捧げたひと、それもヒリヒリするようなエッジを歩くことに魅入られたひとは、平和なスーパーマーケットがああいうふうに見えるのか、とニヤリとしてしまいました。

「War is a drug」とは冒頭の文句ですが、キャスリン・ビグローが、ジェームズ・キャメロンが、映画というdrugに魅入られたひとであるように。


★★★