アステロイド・シティ


1955年、忘れられないあの夏の7日間。

原題:ASTEROID CITY
監督・脚本・原案:ウェス・アンダーソン
原案: ロマン・コッポラ
撮影:ロバート・イェーマン
編集:バーニー・ピリング、アンドリュー・ワイスブラム
美術:アダム・ストックハウゼン
衣装:ミレーナ・カノネロ
音楽:アレクサンドル・デスプラ


『フレンチ・ディスパッチ』をだいぶハイブロウに感じて、「撮りたい画はあるけれど、撮りたい物語はもうそんなにないのかな?」という印象を受けたため、本作もそんな気配に過敏になりながら鑑賞。監督が意図したであろう戦後アメリカ史観や演劇界のメタファーについてはぼんやりとしかわからなかったのだけれど、それでも思いのほかエモさが伝わってくる作品だった。奇しくも少し前に完走していた『LIGHTHOUSE』に通じるものを感じてぐっときてしまった。


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まず、ウェス印の箱庭演出が本作の過剰なほどの「俯瞰」にがっちり嵌っていた。異星人からみた地球。舞台裏と併せて観る劇中劇。意図的な傍観。
登場人物たちも「自分が異星人であるような」「傍観者であるような」「挑まないと誰も自分の存在に気づいてくれないのでは」という、淡い孤独やさみしさ、そこはかとない死の気配を抱いているように見える。

そこを超越していく描写がエモい。人生についての話だと思った。少女たちによる埋葬、教師とカウボーイのダンス、「時々、地球外の方がくつろげる気がする」とつぶやいていた超秀才が星に映し出すイニシャルハート、子どもを乳母に預けてしまおうかと思ったけれどそうしなかった父親、劇や役が理解できなくても”Just keep telling the story."”You’re perfect."!

星がまたたいているような音楽もすばらしかった。
ウェス・アンダーソン監督作(とくに実写)の中でもかなり好きな作品だと思う。
You can’t wake up if you don’t fall asleep.


★★★★