愛を、信じる
第76回カンヌ国際映画祭審査員賞
原題:KUOLLEET LEHDET
英題:FALLEN LEAVES
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
撮影:ティモ・サルミネン
編集:サム・ヘイッキラ
美術:ビレ・グロンルース
衣装:ティーナ・カウカネン
音楽:マウステテュトット
映画初めにぴったりの、ミニマムでこころに染み入る良作でした。
まず、6年ぶりに、引退を撤回してまでカウリスマキは何を撮りたかったのか、というところにぐっときてしまった。インタビューの「愛を、もう一度勝たせてやろう。主役のふたりはとにかくいい人たちだ。殺してしまうなんてできない」という言葉に集約されると思う。
くり返しラジオで流れるウクライナのニュースに、主役のふたりは、カウリスマキは、心を痛めている。しかし、自分が直接的に何か状況を変えることなどできない。今を生きる全世界の人々が抱える憂いと無力感。そもそも映画のふたりは職を失ったり、アル中を患っていたり、と自身の日々の生活にも深刻な問題を抱えている。現実に起きている他国の戦争も、映画の中の個人の生活も、ままならないし世知辛い。
でも、せめて映画の中で、自分たちの意思でどうにかできることについては、カウリスマキはなんとかしてくれようとしたのではないか、と感じた。同僚が職場をいっしょにクビになってくれること、その彼女と手をつなぐこと、連絡先をなくしてしまった相手と再会すること、犬を拾うこと、酒をトイレに流し彼女に会いに行ける自分になることー。
クスッと笑ってしまうようなユーモアのセンスも、犬描写も、あいかわらず最高だった。犬に「(電話)出て」と言う女、好きにならずにいられようか!そして病院出たら、このふたりが待ってるって…!世の中捨てたもんじゃないって絶対みんな思っちゃうじゃん!
今まで出演してきた愛犬とまたちがう犬だなぁと思ったら、新たな犬(アルマ)迎えてるじゃん。好き。
アキ・カウリスマキの愛すべき新作『FALLEN LEAVES 落ち葉』会見。劇中の犬は監督の愛犬チャップリン。「ポルトガルの道で捨てられてたのを見つけました。彼はパルムドッグに値する」と監督。監督は会場に真っ赤な顔で現れたが「もう何年も前にアルコールはやめたよ」と語る。本当かな🙄 #Cannes2023 pic.twitter.com/OJBdp75QQR
— 林瑞絵 (@mizueparis) 2023年5月24日
しかしどうしてカウリスマキの愛犬は、こんなにもTHE・カウリスマキの愛犬なの?こういう犬がカウリスマキの元に集まってくるの??
『希望のかなた』のヴァルプ
クセになる音楽もとても良かった。フィンランドのスパイスガールズww
アンサ役のアルマ・ポウスティさんがトーベ・ヤンソンを演じた『TOVE/トーベ』は、たしか妹がその年のベストに挙げていたので、改めて観てみようと思いました。
★★★★