幸せへのまわり道

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原題:A BEAUTIFUL DAY IN THE NEIGHBORHOOD
監督:マリエル・ヘラー
脚本:ミカ・フィッツァーマン=ブルー、ノア・ハープスター
撮影:ジョディ・リー・ライプス
編集:アン・マッケイブ
美術:ジェイド・ヒーリー
衣装:アージュン・バーシン
音楽:ネイト・ヘラー
原作:トム・ジュノー
Based on a True Story.


1979年生まれ(同世代)、『ある女流作家の罪と罰』
『クイーンズ・ギャンビット』の養母アルマ役、で、すっかりファンになってしまったマリエル・ヘラー監督。前作と同様、やさしくて誠実でチャーミングな作品。抜群にセンスが良いタイトルなのに、邦題にまったく活かされていないところまで前作同様でくやしい。この監督の作品は届くべき層になかなか届きづらいだろうな、と勝手に歯がゆい。

この監督は「許すこと」が撮りたいテーマの一つなのかなと思う。
「怒るのをやめると気分がいい」「僕の心をどうするか決めるのは僕」と感情をコントロールすることの大切さを説きながらも、感情を吐露することが問題を改善するキーになるのがとても良い。

実在する子ども向け番組の司会者フレッド・ロジャース氏をトム・ハンクスが演じており、彼を「現代のヒーロー」として雑誌に掲載するまでの話なのだが、この映画自体もきちんと「ヒーロー」映画になっているのがすごい。
人をていねいに扱い、話を傾聴し、結果的に人を癒す。それはちょっと異様に思えるほどのレベルに達しており、もはや狂人と紙一重なところもヒーローらしい。
ピアノ、スイミングなどのたゆまぬ「修行」シーンもきちんと描かれているし、とくにクライマックスの「第四の壁破り」はサラッととんでもない描写になっている。
キャスティングもトム・ハンクス*1以外考えられない。

育児にコミットしてこなかった父親との確執を抱えた男性*2が「そして父になる」映画でもあり、これを女性監督が撮っているところにも感動した。

監督インタビューがあまり見つけられず、どこまでの意図で計算して撮っているのかわからないけれど、今後も追いかけていきたい監督です。劇場で観てパンフレット買いたかったよ〜〜〜。
とりあえず、パペット片手に歌うトム・ハンクス*3の表情を押さえたシーンは意図したもので、妙に心に残るチャーミングさがあるし、私生活でもロンリー・アイランドのヨーマ・タッコンが夫だったり、と信頼できる人なのは確実かと!


★★★★

*1:監督が息子の知り合いだから承諾したらしいが

*2:これって現代男性の大多数ではないだろうか

*3:トム・ハンクスはパペットを撮られていると思っていた