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映画スターとその娘のひとときのバカンスを描く。
2010年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞

原題:SOMEWHERE
監督・脚本・製作:ソフィア・コッポラ
撮影監督:ハリス・サヴィデス
編集:サラ・フラック
音楽:フェニックス


あの心許なさがなつかしくなる頃、ちゃんと新作が出るようになってる。ソフィア・コッポラ謹製の透徹した孤独感。基本的にはソフィア・コッポラ作は毎回おんなじだと思ってるのですが、今作はおんなじながらもすこしはずしてきてる印象も。

まず全体が異様に間延びしている。なんとなく『人のセックスを笑うな』を思い出させるような画のつくりかた。娘が11才という設定からか、子どもの時間感覚を味わっているようなかんじがしました。体感時間がゆっくりで、かつ時間がのびちぢみするかんじ。各地から安らかな寝息がきこえてきて、思わず笑顔を含んでしまった。

けだるさや空虚さの描写もグレードアップ。よかったのはものがえんえん回る描写がかもしだす無為なかんじ。疾走するフェラーリ、ポールダンス、フィギュアスケート。なんともいえない空気感のプールサイドのシーンもよかったな。
逆に「I'm fuckin' nothing」とかはいらないな。『マリー・アントワネット』のお風呂でひざ抱えシーンといっしょで、自己憐憫っぽくなりすぎて萎える。

主演の2人でないとほんとうに間が持たない映画ではありました。父役のスティーブン・ドーフを観ていると、ソフィアには父コッポラや元夫スパイク・ジョーンズがこういう風に見えていたのかな?と思う。娘役のエル・ファニングの存在感も見事。なにしろ11才という設定なので、どうしようもなく選べない。よるべなさがより強調されていたと思う。ソフィア・コッポラ自身がまだこのよるべなさを感じたまま、庇護者を探しつづけているんだとしたら、それはぞっとするほどさびしいなあと思いました。



★★★