ふがいない僕は空を見た

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生きる。それだけのことが、
何故こんなに苦しくて愛おしいのだろう。

監督:タナダユキ
脚本:向井康介(『リンダリンダリンダ』『マイ・バック・ページ』)
撮影:大塚亮
編集:宮島竜治
美術:松塚隆史
音楽:かみむら周平
原作:窪美澄ふがいない僕は空を見た』(第24回山本周五郎賞


原作既読だったので、これをどういう風に映像化するのかとたのしみにしていた作品。
青春群像劇という意味では、桐島的なテイストもありつつも、舞台は学校の外にあり、広く「性」と「生」に迫る作品。やっかいな「サガ」をテーマにしているところは、ちょっと『人のセックスを笑うな』に通じるところもあるかな、とも。(もっと切実で笑えないけど。)

姑に不妊を責められるコスプレ主婦・里美、その主婦を本気で好きになってしまう学生・卓巳、ぼけた祖母を背負う苦学生・福田、女手一つで助産院を切り盛りする・卓巳の母―いろんな年代・立場のいろんなひとが出てくるのだけど、他のひとにはわからない そのひとだけの痛みや業にそっと触れるかんじがすばらしかった。直球の性欲や現実逃避、親友への苛立ちや嫉妬、元夫に対する情など、それぞれの悩みや弱さを描きつつ、誰がまちがってるとか誰がより辛い、と思わせないようなフラットな視点がすごく良かったです。「とにかく生きて、そこに居て」というメッセージ、ぐっときたなあ。

あとはキャスティングがばっちりだなー、と。けっこうキッチュな設定をすっとのみこめるくらい、登場人物の実在感がすごかった。田畑智子さんはきれいすぎるなと思ったけど、演技で完全に説得されました。

原作読んでたから補完できた設定や登場人物の心情もあったので、ちょっと説明不足じゃないかしら?と思ったりもしたけど、これで142分だものな!フルに描き切ってると思いました。

追記:
シネマハスラーで、「韻を踏むようなシーンの連なり」と評されていて、すばらしい表現だと思った。


★★★★