ある男


愛したはずの夫は、まったくの別人でしたー
それでも、また愛せるのか。


監督・編集:石川慶
脚本:向井康介
撮影:近藤龍人
照明:宗賢次郎
美術:我妻弘之
装飾:森公美
スタイリスト:高橋さやか
原作:平野啓一郎


みなさま、あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さてさて、映画初めです。本当は新年一発目は景気がいいやつ(イメージ:ドウェイン・ジョンソンが出てるやつ)を観たかったものの、いま一番観たいのはこれだったんですよね。
結果、観逃さないで本当に良かった。去年のベストに組み込みます!原作未読ですが、絶対に読みたい!


まずは、映画うま!なんて端正な映画を撮るんだろう!社会派とエンタメのバランス、多角的な人物像、豪華な役者陣など観ていてうっとりしてしまった。「そこで…説明…しない…!」と何度も心の中で快哉を叫んでしまった。


以下、ネタバレ

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2022年の音楽をふりかえる

ecrn awardに投稿しました!
https://ecrn.web.fc2.com/tally22.html


今年はなんといっても宇多田様!生きててくれるだけでありがたいのに、なんと新譜を我にあたえたもう。


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『BADモード』の歌詞ふるえたし、『Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-』ずっと聴いてた。



寝るときはほぼこれ。本当に良い気分で寝られる。子どもたちもとても気に入っていました。



あとは、なんと言っても今年の一曲『This Hell』!つらいとき歌いまくった。


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今年はなんと家を買ってしまったのですが、なんか今さらずっしり感じたんですよね…男女格差。さいわい結婚前まではあまり感じずに生きてこられたのですが、結婚/出産でだんだんと足を取られて、ついに「あれ?このシステムに組み込まれた以上、全力で逆走しないとつぶされるっぽい?」ということにようやく思い至った感じでした。計画性のある人なら事前準備のうえ臨んでしかるべきだと思うのですが、こちとら行き当たりばったりのヤンキー人生。あわてて「そうだ…資格取ろう…」(安直)と勉強し始めた一年でした。のんしゃらんと生きていたい人生だったがしかたない。
そんなわけでRina Sawayama様をはじめ、ビヨンセ女王、メーガン、Lizzo、Linda Lindasなどがんばって戦っている女性にとても励まされました。



よく聴いたのはこちら!

Mr. Morale & The Big Steppers [Explicit]

Mr. Morale & The Big Steppers [Explicit]

  • pgLang/Top Dawg Entertainment/Aftermath/Interscope Records
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SOS [Clean]

SOS [Clean]

  • Top Dawg Entertainment/RCA Records
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Growing Up

Growing Up

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SICK!

SICK!

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demon time

demon time

  • アーティスト:Mura Masa
  • Interscope Records
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よかった曲。

  • Hope Tala / Leave It On The Dancefloor


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  • NxWorries feat. H.E.R / Where I Go


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  • MoonByul feat. Seori / Shutdown


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  • Beyoncé / BREAK MY SOUL


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  • Megan Thee Stallion & Dua Lipa / Sweetest Pie


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  • Lizzo / About Damn Time


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  • LE SSERAFIM / Fearless


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  • Balming Tiger feat. RM of BTS / SEXY NUKIM


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今年はBTSの兵役履行が始まったこともあり、K-POPについてもヨジャドルを見るのが楽しかったです。以前からの推しであるスルギちゃん(Red Velvet)、ムンビョルさん(MAMAMOO)に加え今年デビューのKAZUHA様 (LE SSERAFIM)が大無双!バレエ者なら誰しもあこがれるであろう存在だし、どんどん上手くなっているので本当に先が楽しみです。

  • Red Velvet / Feel My Rhythm


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  • MoonByul / LUNATIC


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  • LE SSERAFIM "KAZUHA"


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  • KAZUHA SOLO STAGE (MMA 2022)


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個人的には今年は常に疲れていてエネルギーが枯渇ぎみでした。しかし来年もまだまだ難所が続くので、PSYオッパを見習って元気で走り抜けたい所存です。

  • PSY / That That (prod. & feat. SUGA of BTS)


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2022年の映画をふりかえる

いやー!2022年もつらかった……!
何度ももうだめだ……と思うときがありましたね…(どっこい生きてる)。今年はなんと家を買ってしまったのですが、隣人トラブルと二児を抱えての引っ越し、どう乗り切ったのか記憶がない…。
キャパお猪口のわたしにはあいかわらず過積載な一年だったので、映画にはひたすら現実逃避とエンパワメントを求めていました。


では、今年もベスト10まで以下列記。


1.トップガン マーヴェリック



2.ガンパウダー・ミルクシェイク



3.スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム



4.TITANE



5.NOPE



6.リコリス・ピザ



7.グリーン・ナイト



8.All the Streets Are Silent



9.わたしは最悪



10.ある男



今年はとくに現実がぎゅうぎゅうだったので、しょうもないことを豊かに描く映画がすきだったなと思います。巷で流行りのファスト映画や倍速視聴とは真逆の、時間をぜいたくに使ったすき間のある映画にとても救われました。


いちばんよかったなと思う役者さんは、やっぱりトムちんだよねー。もう好き嫌いを超えてこちらをぶん殴ってくる生きざま ナフリスペクト!


『TITANE』でデビューしたアガト・ルセルさんの唯一無二の存在感もすてきだった。推せる。  

https://www.instagram.com/afundisaster/


 

あとは、わたしがあこがれてやまないからだの利くかっこいい女たち!『ガンパウダー・ミルクシェイク』のミシェル・ヨー様、カレン・ギランちゃん、そこから派生して観た『ベイビーわるきゅーれ』の伊澤彩織さん。スタイリッシュなシュリちゃん。みんな大好き!




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映画と同じく、SNSTwitterやインスタは追わず(追えず)、ブログを読むのが好きだなぁみたいな関わり方に回帰していたような。友だちの日常ブログを読むとすっと心が落ち着く気がしてありがたい。みんな文章がうまい。

来年はすごーくがんばらなくてはいけない事案がいくつもあって今から泣きそうなんですが、なんとか…なんとか生きる!

ケイコ 目を澄ませて


逃げ出したい、でも諦めたくない
愛想笑いが嫌いで嘘のつけないケイコ
耳が聞こえない彼女の心は‟雑音”だらけ。


監督・脚本:三宅唱
原案:小笠原恵子
脚本:酒井雅秋
撮影:月永雄太
編集:大川景子
照明:藤井勇
録音:川井崇満
美術:井上心平
装飾:渡辺大
衣裳:篠塚奈美
ヘアメイク:望月志穂美、遠山直美
ボクシング指導:松浦慎一郎
手話指導:堀康子、南瑠霞
手話監修:越智大輔


三宅唱監督はやはり街映画の名手だな、と。入り組んだせまい路地と高架下と河川敷。わたしは東東京に住んでいるので、この映画に映しとられた風景にまずぐっときてしまった。

音が豊かな映画でもある。劇伴もなく、主演の岸井ゆきのさんはほぼせりふがないのに、街の音、ミットを打つ音、目線や手話など、音が雄弁に立ち上がってくる。

耳が聞こえないボクサーというところにフォーカスせず、日常を積み重ねた先に確かな成長があるのも良かった。岸井ゆきのさんのコンビネーションミットは、「ただただ楽しい!」がストレートに伝わってきて感動した。

最終的に目指すところが試合だったとしても、好きなものに向かう時の原点ってこういう瞬間だよな、と。そこから少し離れたくなる時やまた戻りたくなる時、続けていてよかったまたがんばろうと思う時が、全くドラマチックに描かれていないのだがしみじみ良かった。


★★★★

THE FIRST SLAM DUNK


原作・監督・脚本:井上雄彦


原作者しかなしえない剛勇な映画化にふるえました。わたしは湘北ならリョーちん推しなので、もうオープニングからエモが爆発しすぎて完全にのまれてしまった。あー!ただでさえ横並びの画に弱いのに!それで動いてくるーー!!しかもThe Birthday流してくるーーー*1!!!うわーん

連載時はやはり印象的な得点シーンが強く記憶に残りながら読み進めていたけれど、こうして実際の試合として均して観るとまた少し漫画とは違った印象が生まれるようでおもしろかった。

回想と試合のカットバックはものすごく的確でバランスが良かったと思うけれど、欲を言えば後半はもっと強弱をつけてスピード感を出した方が良かったと思う。あと宮城母は個人的にはちょっと苦手かも。

映画を通して一番心に残ったのは、やはり井上雄彦先生の描く線の美しさとバスケ愛。自分が好きなスポーツをこんなに絵が上手い人が愛を持って動かしてくれたらどんなに幸せだろう、とバスケを好きな人が謎にうらやましくなった。

基本的には漫画の内容を脳内で補完しながら鑑賞したため、初見の人(とくにメンバーの関係性を知らない人)がどう感じるのかは全くわからない。


★★★★

*1:アニメ全然観てないので主題歌に全く思い入れない勢

ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー


想いは、受け継がれる。
第95回アカデミー衣装デザイン賞

原題:BLACK PANTHER: WAKANDA FOREVER
監督・脚本・原案:ライアン・クーグラー
脚本:ジョー・ロバート・コール
撮影:オータム・デュラルド・アーカポー
編集:マイケル・P・ショーバー、ケリー・ディクソン、ジェニファー・レイム
美術:ハンナ・ビークラー
衣装:ルース・カーター
音楽:ルドウィグ・ゴランソン
主題歌:リアーナ


ここのところMCUいちゃもんおばさんと化しているのですごく迷ったのですが、ブラックパンサーは自分にとって特別なヒーローなので、意を決して観に行きました。覚悟はしていたものの、いろんなきもちのせめぎ合いで、受け取り方がとても難しかった。


以下ネタバレ

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グリーン・ナイト


怪物と戦う者は みずからも怪物とならぬよう心せよ

原題:THE GREEN KNIGHT
監督・脚本・編集:デヴィッド・ロウリー
撮影:アンドリュー・ドロス・パレルモ
美術:ジェイド・ヒーリー
衣装:マウゴシャ・トゥルジャンスカ
音楽:ダニエル・ハート


『A GHOST STORY』ですっかりファンになってしまったデヴィッド・ロウリー監督がA24と再タッグ!

友だちからのアドバイスで原典『ガウェイン卿と緑の騎士』のあらすじだけ頭に入れて鑑賞したのだけれど、これが良かった。この話を全く知らなかったら、「これなにのなに???」となっていただろう。知っていたらいたで、へんな映画だなぁーーーと笑ってしまった。

まずとにかく美徳ミッション全然クリアしない。(5つの美徳*1についてもあんまり教えてくれない。)一年準備期間があったのに全く成長しておらず、見返り要求したり、毒キノコ食べてゲロ吐いたり、嘘ついたり、射精したりと、かなり終盤までしょうもない……。なのにじっくり尺取るし、撮影や音楽は文句なしに幻想的で荘厳でうつくしい。バリー・コーガンはムダにいきいきしてるし。


結局冒頭にエセルが言う「善良なだけで十分」に回帰するのと、どんなにもがいても人間がたどり着けるのはそこくらいなのかも…と思わせるような描写が、監督の妙な達観とあたたかみを感じて、やっぱりこの監督好きだなぁと思いました。

正直メタファーを理解しきれたとは思えないし、原典自体に様々な解釈があるものなので、原典にくわしいほど解像度が上がって楽しい作品だろうなとは思う。


きつねは最高にかわいかったさ。


★★★★

*1:「寛大」「慈愛」「貞節」「礼節」「敬虔」