スパイダーマン:スパイダーバース


「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
ニューヨーク・ブルックリン。マイルス・モラレスは、頭脳明晰で名門私立校に通う中学生。彼はスパイダーマンだ。しかし、その力を未だ上手くコントロール出来ずにいた。そんなある日、何者かにより時空が歪められる大事故が起こる。その天地を揺るがす激しい衝撃により、歪められた時空から集められたのは、全く異なる次元=ユニバースで活躍する様々なスパイダーマンたちだった―。
運命を受け入れろ。
第91回アカデミー長編アニメーション映画賞

原題:SPIDER-MAN: INTO THE SPIDER-VERSE
監督:ボブ・ペルシケッティ,ピーター・ラムジー
監督・脚本:ロドニー・ロスマン
プロデューサー・脚本・ストーリー:フィル・ロード


期待値が上がりすぎて、「これ以上ハードルを上げてくれるな!」と両耳ふさいでワーワーワー!状態の中、わたしの好みをよく知る映画好きの友人が「好きな要素しかないのでは?」と断言し、ト・ド・メ。その友人のススメ通り、IMAX 3Dでぶちかましてきました。

多幸感~~~!なんという快楽!*1楽しすぎてきもちよすぎて涙が出そうになるなんてことあるだろうか!何度Wooooooo!と言いそうになったことか!ずーーーっとスイングしていたい!(観ていたい!)『ヒックとドラゴン』と同種の感動……。*2

映画を観ているあいだじゅう、「マジで好きな要素しかないな……」と感心してしまいました。
パラレルワールド、青春成長譚、ヒーローの継承、覚醒の瞬間、「僕ら全員がパワーを持っていて、誰もが自分の負うべき責任をきちんと果たさなければならない」というメッセージ、Apache / The Choice is Yours、“It’s a leap of faith. That’s all it is.”、Chance The Rapperのポスター、マハーシャラ・アリの"Hey"、ロールシャッハヒョウタンツギ……そもそも男子がエアジョーダン1で、女子がトゥシューズはいてんすよ!なんなん!?


この映画わたしに捧げられてんのかな?と思いましたが、そんなわけはなく徹頭徹尾スタン・リー&スティーブ・ディッコの魂に捧げられた内容であるのもあつかった。
このマルチバースの提示が、悩める凡人たちをどれだけ励ましてくれることか!「ありがとう。僕たちは一人じゃないと教えてくれて」という献辞は涙なしには観られない。「Excelsior!」を掲げつづけたスタン・リーの「サイズは合う、いつかね(It always fits. Eventually.)」というせりふの重みよ!


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それぞれの世界線スパイダーマンがきちんと成長して元の世界に帰っていく姿はすばらしいし、帰っていく順番の、ラストがグウェンじゃなくピーターBなのもいいんだよなぁ。

マルチバースという物語+映像的発明で、たくさんの親愛なる隣人の凡人に絶対の肯定と限りない勇気を与える映画だと思う。最高!!!

追記:
「これはP様の意見を聞かねば!」と興奮醒めやらぬ状態でリスナーメールを送ったところ、見事採用されたのでした。ヤッター!

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★★★★★

*1:高橋ヨシキさんが「射精しそうな映画」と評していてなるほど

*2:何回観ても飛翔シーンで泣いてしまう……

ビール・ストリートの恋人たち


愛があなたをここに連れてきた
第91回アカデミー助演女優賞

原題:IF BEALE STREET COULD TALK
監督・脚本・製作:バリー・ジェンキンス
撮影監督:ジェームズ・ラクストン
編集:ジョイ・マクミロン、ナット・サンダーズ
美術:マーク・フリードバーグ
衣装:キャロライン・エスリン=シェイファー
音楽:ニコラス・ブリテル
音楽監修:ゲイブ・ヒルファー
原作:ジェイムズ・ボールドウィン


『ビール・ストリートに口あらば』って最高の邦題だと思うし、今作の雰囲気にも合っていると思うんだけどな。

前作『ムーンライト』で胸打たれた、この世知辛い世界を限りなくうつくしく描く力は健在でした。この監督の、恋人の、とくに恋の始まる瞬間の、胸をしめつけるような、ときめきややさしさの描写は、ほんとうにすばらしいと思う。
倉庫でのおままごとのようなやりとりからの「The World is ours!」感!はじめてのセックスのいたわりとロマンテッィクさたるや! 村上春樹でいうところの「それを熱源にして、自らを温めていくことができる 滋養あふれた」記憶のかけらたち。

「夢の続き」の田我流のリリックを思い出したりしました。

傷跡の数だけ気の利いたジョークと
溜め込んだ優しさで変えていく Bad days
神様ありがとう 笑いがないと
物語は残酷で退屈な内容
天国に持っていけるのは思い出くらい

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2人が世界のうつくしさを共有するところと、1人の世界をだいじに守っているところが両面描かれているのもすきだ。

ただ、今の自分にはちょっとだけ苦しかった。
わたしは、昨年末あたりからずっとつらさ(個人比)を感じることが多く、それはもういろんなブツを大量投下して、なんとか日々のきもちをあげているのだけれど。もちろんそれはこの2人が置かれた理不尽な状況とは比べるまでもないようなちっぽけなつらさで。そんな過酷な世界で、2人はお互いを思いやり、信頼できる人々と肩を寄せ合い、思い出というささやかな灯し火で闇を照らしながら、強く生きている。
こんなのを観せられちゃあ、うかつに不平や弱音を吐けないよ……。

いまのわたしには、その高潔さよりも、「あんたはレイプされたことないだろ」や「ありがたいがお前は地獄を知らない」という、完全に間違っているのに味方であるはずのひとになぜか突きつけてしまう、ゆがんだ怒りの切っ先のほうが妙にリアルに感じられたのでした。


★★★★

女王陛下のお気に入り


ごめんあそばせ、
宮廷では良心は不用品よ。
17人の子供に先立たれた孤独な女王と、
その寵愛を取り合う二人の女。
18世紀、イングランドで起きた禁断の物語。
2018年ヴェネツィア国際映画祭銀獅子審査員大賞
第91回アカデミー主演女優賞

原題:THE FAVOURITE
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:デボラ・デイヴィス、トニー・マクナマラ
撮影監督:ロビー・ライアン
編集:ヨルゴス・モヴロプサリディス
美術フィオナ・クロンビー
衣裳:サンディ・パウエル
音響:ジョニー・バーン


「女優」たちの三つ巴の演技合戦&ときめきしかない衣装、最高かよ~~~!『メリー・ポピンズ リターンズ』に続き、サンディ・パウエル様、本当にありがとうございます。黒レースの眼帯には、胸を撃ち抜かれました!!!


エル・ドライバー a.k.a. ダリル・ハンナを思い出したよ~。


いやはや、ひとの感情の種類って、ひとのこころを支配する手管って、こんなにもたくさんあったんだなぁ、と近ごろめっきりさびついているセンサーがめまぐるしく稼動しました。
飴と鞭、賞賛と嘲笑、崇拝と軽侮、献身と威圧、共犯者と庇護者、嘘と真実―、性技、思い出話(ずるい!)、自分の傷をさらすこと、相手の傷に寄り添ってみせること。
3人の女の中の、誰か1人の視点を選んで観ても、内2人の関係性に着目して観ても、3人のバランスを俯瞰で観ても、どれも見ごたえがある。

過去作に比べて格段にわかりやすい設定だけれど、ヨルゴス・ランティモス印の、不条理で滑稽な「檻」に囚われた人間の「さが」をあぶりだす描写と、ばっちりハマっていて、「これはいい題材を選んだなぁ」とホクホクしてしまいました。

陣取りゲームを描いたソープ・オペラ的なおもしろさはもちろんだけど、愛憎や私欲を描くだけではおわらない。俗悪さの中に崇高さが顔を出すバランスは、同じく笑ってしまうほどの共依存ゲームを描いた『ファントム・スレッド』を思い出したりしました。
もっと言えば、虚構や滑稽さや軽薄さと、人生の深刻さや重大さやかけがえのなさが、分かちがたく結びついている様子は、『存在の耐えられない軽さ』。


わたしの推しは、やはりレイチェル・ワイズ演じるサラ。
鑑賞中はあまり意識していなかったけれど、今にして思えば、わたしはオリヴィア・コールマン(アン女王)の視点で観ており、結局これはずっと2人の物語だった、とすら思ってしまった。途中、エマ・ストーン(キャリアハイ更新のハマり役!)のコケティッシュな魅力に陥落しつつも、終盤は自分が見つめ続けたひとは誰だったかに気づく。

この女王の描写のバランスがすばらしくて…。彼女はアビゲイルの魔性やサラのある種の高潔さにずっと勘付いていたようにも、サラが去ってようやく気づいたようにも見える。そして、サラに甘い嘘を言ってほしい反面、決して嘘吐きに堕ちてほしくないようにも、彼女に戻ってほしい反面、彼女を解放したいようにも見えた。

この機微は、『運命の女の子』の「きみはスター」を思い出したりしました。

星は落ちてこないから星なのだ と
ぼくのスター けしてぼくを好きにならないで


ラストの、死のにおいに満ちみちたうさぎたちのショットが示す通り、アン女王は近い将来崩御することとなる。アビゲイルの「あれ?わたしが欲しかったのってこれだっけ?」という最高の死んだ目を見て、サラは試合に負けて勝負に勝ったのだ、と思いました。


★★★★

ファースト・マン

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月への不可能な旅路を体験せよ。
人類史上、最も危険なミッション

原題:FIRST MAN
監督・製作:デイミアン・チャゼル
脚本・製作総指揮:ジョシュ・シンガー
撮影:リヌス・サンドグレン
編集:トム・クロス
プロダクションデザイン:ネイサン・クロウリー
衣装デザイン:メアリー・ゾフレス
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
原作:ジェイムズ・R・ハンセン


物語的にはデイミアン・チャゼル作品の中で最も好きかもしれない。
抑制されたしずかな描写の中に充満する、死のにおいとリリシズム。淡々と描かれる偉業が非常に個人的な物語に帰結する構造は、『スポットライト』『ペンタゴン・ペーパーズ』の脚本家ジョシュ・シンガーの影響が大きいのかな、と思いました。


不在の存在を感じさせるうつくしいホームビデオ、という点では、『レイチェルの結婚』を、長い時間をかけてついに喪失と向きあう、という点では『永い言い訳』を、多くの屍の上に成した夢と狂気と覚悟がたどりついた最果ての地、という点では『風立ちぬ』を、彼岸から此岸への帰還、という点では『ハート・ロッカー』を思い出したりしました。

ただ、『ハート・ロッカー』が彼岸に囚われ、此岸に対する強烈な違和感を残したままラストを迎えるのに対し、『ファースト・マン』はいまだ隔たりはあるにせよ、ようやく帰還した、というニュアンスが強く、こころにほのかな灯りをともすような描写になっている、と思います。


それにしても、月と死というモチーフの親和性には改めて感じ入るものが。
ロケットは完全に棺桶に見えたし、月は黄泉の国だった。『メリー・ポピンズ リターンズ』の"The Place Where Lost Things Go"でも、失くしたものが行く場所は「behind the moon」や「on the moon」かも、とくり返し歌われていたことを思い出しました。

わたしも含め女性は、共感や共有を求めがちで、孤独や哀しみを分かち合えないことに一抹のさびしさを感じてしまったりする。
しかし、こと死については、たとえ同じ家族であっても、愛するひとの死に面してその背景や文脈はそれぞれちがう。そのパーソナルで不可侵な部分が、月の神秘性とあいまって改めて自分の中に染みこんだ気がしてよかったです。わたしはそれをときどき忘れてしまうから。

淡々としすぎて退屈だ、という感想も散見されるけれど、背景に流れるものが非常にリリカルでロマンティックでエモーショナル、そしてデイミアン・チャゼル印の「息苦しいほどの、当事者同士以外を寄せつけない閉鎖性」なので、これくらいのバランスでないと困る、と思いました。

その背景を下支えする音楽がとてもすばらしかった。「ルナ・ラプソディ」のレコード欲しい…。

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★★★★

バーニング 劇場版

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彼女は一体、なぜ消えたのか?
待ち受ける衝撃のラストは、想像を絶する―
カンヌ映画祭で歴代最高評価を獲得した、
究極のミステリー。

英題:BURNING
監督・プロデューサー・脚本:イ・チャンドン
脚本:オ・ジョンミ
撮影:ホン・ギョンピョ
照明:キム・チャンホ
編集:キム・ヒョン
アートディレクター:シン・ジョムヒ、キム・ダウォン
衣装:イ・チュンヨン
音楽:モグ
原作:村上春樹


観客の好き嫌いを超越するような、とにかく圧倒的な求心力をもった映画。バイタルに影響がでるレベルで、あらゆる力を絞り取られました。
イ・チャンドン作品の、否が応にも集中を強いられ、画面から目を離せない緊張感や、「わたし!いま!映画を観てる!」というゾクゾクするような昂揚感は、ポール・トーマス・アンダーソン作品に通じるものがある、といつも思う。

さて、村上春樹信者のわたくしですが、この映画は「納屋を焼く」そのものを映画化したというよりも、「村上春樹」をまるごと取り込み、咀嚼し、換骨奪胎したような作品だと思いました。とくに『ねじまき鳥クロニクル』の気配を強く感じました。

前半は、原作に沿って、「あるはずのものがないこと」「最初から存在していなかったかのような消失」の不協和音がどんどん世界を侵食し、自分の足元が崩れていくような、また現実世界の薄皮一枚がめくれて、別の世界が顔を出すような、不気味な違和感(あるいは不吉な暴力性)をかもしだしていました。
マジックアワーの長回しは、現実と空想の境が溶けていくようなこわいくらいのうつくしさでした。

しかし、後半へ進むにつれ、原作の低温感はなりをひそめ、「愛」や「嫉妬」が明言され、主人公の激情が走り出す。「ないことを忘れる」とは真逆の、この世に一人だけでも「あると信じる」こと。現実世界では何も持たない青年が、「あちら側」から「こちら側」へ女を取り戻そうともがくこと。
この行為は、もはや『ねじまき鳥クロニクル』の世界観そのもので、グレートハンガーとして、虚無とそこはかとない悪意をたたえた「ベン」像も、非常に「ワタヤノボル」に近いものがあると感じました。

ラストは、希望とも絶望とも、観客によっていかようにでも解釈でき、観客自身を照射する鏡としての器の大きさ・深さを感じて、なおさらこの映画の凄みを感じました。

それほど単純ではないにせよ、わたしにとっては、憎悪や断絶というよりは、かすかに覚悟や脱皮のニュアンスのほうが勝りました。
ねじまき鳥クロニクル』のメタファーの世界で、主人公がバットで「ワタヤノボル」の頭をかちわったように、ジョンスはちいさな革命を起こしたのだと思います。それがどちらの世界の出来事であれ。
そしてもしかしたらメタファーが現実を凌駕することがあるかもしれない。

3人のメインキャストは、顔からたたずまいから完全に「村上春樹」の世界を体現していてすばらしかった。ヘミ役の方、これがデビュー作だなんて信じられない。からだのしなやかな使い方や雰囲気ある存在感に、『きみの鳥はうたえる』石橋静河さんに通じるものを感じました。


★★★★

クリード 炎の宿敵

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戦わなければならない奴がいる。
『ロッキー/炎の友情』を受け継ぐ、息子同士の宿命の戦い

原題:CREED II
監督:スティーヴン・ケイプル・Jr
ストーリー:チェオ・ホダリ・コーカー
撮影:クレイマー・モーゲンソー
編集:デイナ・E・グローバーマン
美術:フランコ=ジャコモ・カルボーネ
衣装:リズ・ウォルフ
音楽:ルートヴィッヒ・ヨーランソン


毎年2/11は、挙式したレストランで記念にランチをいただくのを楽しみにしているのですが、術後3日は要安静とのことで今年は断念。せめてもの思いで、憔悴しきった死に体に闘魂を注入してきました。

評価の高かった『クリード チャンプを継ぐ男』の続編ですが、わたしはこちらの方が好きかもしれない。
前作のスマートさや鮮やかさ、爽快感はないけれど、これぞロッキーシリーズといった男汁と泥臭さ、がバッカゲン!

『ロッキー4』でアポロを死なせロッキーに敗れた男イワン・ドラゴが、息子と共に地獄から舞い戻ってくるというストーリーは、「敗れた側にも物語がある」という大好物な展開。さらにアドニスも、ロッキーも、ドラゴも、「そして父になる」。

とにかくすばらしいのが、最終決戦の着地。なんという神技!失うものがないヴィクターがアドニスに負けるかよ!と断腸の思いで観戦していましたが、ドラゴ親子は負けない!!イワンが過去という呪縛を断ち切り、ようやく息子と向き合った選択の結果は、自らの苦渋の道程全てが反映された、ヴィクターもアドニスも救うような一手で、究極の憑き物落とし映画だな、と涙が止まりませんでした。

もちろん、宿命を超えて、自前の「生きる場所」と「家族」を確立したアドニスにも拍手。
鑑賞後、「でも嫁のリング先導はフフッてなるよね~」と笑っていたら、夫は「いや、おれは世界戦を迎えるとしたら絶対に嫁の歌で入場する」と大真面目な顔をしており、これが正解なのか……。


★★★★

メリー・ポピンズ リターンズ

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ディズニー史上 最高のハッピーを―。
彼女の魔法は、美しい。

監督・製作・原案:ロブ・マーシャル
原案・脚本:デヴィッド・マギー
編集:ワイアット・スミス
プロダクションデザイナー:ジョン・マイヤー
衣装デザイナー:サンディ・パウエル
音楽製作総指揮・音楽監修:マイク・ハイアム
歌曲・音楽:マーク・シェイマン
歌曲:スコット・ウィットマン


優先させるべき作品は他にもあったけど、いまはただただ満身創痍で、切実に魔法を欲していた…。
ロブ・マーシャルにすがるのも、オリジナル版を暗記するほど観過ぎているのも、不安だったけど、行ってきました。

結果、自分としてはかけがえのないものをもらいつつも、残念ポイントも多く、一長一短が極端な作品だったなと。
基本的にはさすが大ネタの続編だけあって、リスペクトを持ってよく練られた作品だと思いました。テーマに始まり、キャラクター、台詞、旋律やアイテム、アニメーションとの融合、などオリジナル版を継承しつつも、父親像なんかは今の時勢向けにアップデートされていてよくよく配慮されているなーと感心しました。*1

ダンスシーンはロブ・マーシャルの力点見えすぎて笑ってしまうほど、楽しくてすばらしかったけど、欲を言えば子どもでも即コピれるようなキャッチーでかんたんな振り付けがあっても良かったかなと思う。
楽曲面については、VHS擦り切れるまで聴かないと、オリジナルと比較するのはフェアじゃないかな、と思っています。でもbowlとholeなどそこここにちりばめられた楽しい韻踏みや歌詞の内容は素晴らしかったと思います。


△最高ポイント

  • 衣装!!!
  • "The Place Where Lost Things Go"
  • 点灯夫たちのシルエット~"Trip a little light fantastic"エンド
  • 踊り出す ディック!ヴァン!ダイク!(92歳)
  • "Practically Perfect"とつぶやくエミリー・ブラントの表情

▼冷めポイント

  • 長い。テンポが悪い。特に前半の現実パートはひどい。
  • 子どもたち良い子なんだけどキャラが弱い。身長はかってくれー!
  • 実弾解決 必要か?
  • ディズニー史上、最高のハッピーなら、ドース甥のあの顛末はナシ
  • エミリー・ブラントがものすごくきれいに撮れてる時とものすごくごつく撮れてる時の差が激しい
  • ジュリー・アンドリュースの澄み切った高音をどうしても期待してしまう自分


最高ポイントでは5億点でてるんですが、冷めポイントもわりとクリティカルなものが多いんだよな……。

たぶんタイミングが違っていたらもっと辛口だったかもしれないけれど、大切な人を亡くしてしまったタイミングで、"The Place Where Lost Things Go" を映画館で聴けたことには感謝の念が大きいです。めずらしくちょっと逡巡した様子で唄いだすメリー・ポピンズが、まだ混乱と恐怖のさなかにいる自分を慰撫してくれる歌でした。


★★★★

*1:仕事一徹の厳格な父親→ワークライフバランスや家計、子らへの接し方に悩めるイクメン