2022年の映画をふりかえる

いやー!2022年もつらかった……!
何度ももうだめだ……と思うときがありましたね…(どっこい生きてる)。今年はなんと家を買ってしまったのですが、隣人トラブルと二児を抱えての引っ越し、どう乗り切ったのか記憶がない…。
キャパお猪口のわたしにはあいかわらず過積載な一年だったので、映画にはひたすら現実逃避とエンパワメントを求めていました。


では、今年もベスト10まで以下列記。


1.トップガン マーヴェリック



2.ガンパウダー・ミルクシェイク



3.スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム



4.TITANE



5.NOPE



6.リコリス・ピザ



7.グリーン・ナイト



8.All the Streets Are Silent



9.わたしは最悪



10.ある男



今年はとくに現実がぎゅうぎゅうだったので、しょうもないことを豊かに描く映画がすきだったなと思います。巷で流行りのファスト映画や倍速視聴とは真逆の、時間をぜいたくに使ったすき間のある映画にとても救われました。


いちばんよかったなと思う役者さんは、やっぱりトムちんだよねー。もう好き嫌いを超えてこちらをぶん殴ってくる生きざま ナフリスペクト!


『TITANE』でデビューしたアガト・ルセルさんの唯一無二の存在感もすてきだった。推せる。  

https://www.instagram.com/afundisaster/


 

あとは、わたしがあこがれてやまないからだの利くかっこいい女たち!『ガンパウダー・ミルクシェイク』のミシェル・ヨー様、カレン・ギランちゃん、そこから派生して観た『ベイビーわるきゅーれ』の伊澤彩織さん。スタイリッシュなシュリちゃん。みんな大好き!




www.youtube.com




映画と同じく、SNSTwitterやインスタは追わず(追えず)、ブログを読むのが好きだなぁみたいな関わり方に回帰していたような。友だちの日常ブログを読むとすっと心が落ち着く気がしてありがたい。みんな文章がうまい。

来年はすごーくがんばらなくてはいけない事案がいくつもあって今から泣きそうなんですが、なんとか…なんとか生きる!

ケイコ 目を澄ませて


逃げ出したい、でも諦めたくない
愛想笑いが嫌いで嘘のつけないケイコ
耳が聞こえない彼女の心は‟雑音”だらけ。


監督・脚本:三宅唱
原案:小笠原恵子
脚本:酒井雅秋
撮影:月永雄太
編集:大川景子
照明:藤井勇
録音:川井崇満
美術:井上心平
装飾:渡辺大
衣裳:篠塚奈美
ヘアメイク:望月志穂美、遠山直美
ボクシング指導:松浦慎一郎
手話指導:堀康子、南瑠霞
手話監修:越智大輔


三宅唱監督はやはり街映画の名手だな、と。入り組んだせまい路地と高架下と河川敷。わたしは東東京に住んでいるので、この映画に映しとられた風景にまずぐっときてしまった。

音が豊かな映画でもある。劇伴もなく、主演の岸井ゆきのさんはほぼせりふがないのに、街の音、ミットを打つ音、目線や手話など、音が雄弁に立ち上がってくる。

耳が聞こえないボクサーというところにフォーカスせず、日常を積み重ねた先に確かな成長があるのも良かった。岸井ゆきのさんのコンビネーションミットは、「ただただ楽しい!」がストレートに伝わってきて感動した。

最終的に目指すところが試合だったとしても、好きなものに向かう時の原点ってこういう瞬間だよな、と。そこから少し離れたくなる時やまた戻りたくなる時、続けていてよかったまたがんばろうと思う時が、全くドラマチックに描かれていないのだがしみじみ良かった。


★★★★

THE FIRST SLAM DUNK


原作・監督・脚本:井上雄彦


原作者しかなしえない剛勇な映画化にふるえました。わたしは湘北ならリョーちん推しなので、もうオープニングからエモが爆発しすぎて完全にのまれてしまった。あー!ただでさえ横並びの画に弱いのに!それで動いてくるーー!!しかもThe Birthday流してくるーーー*1!!!うわーん

連載時はやはり印象的な得点シーンが強く記憶に残りながら読み進めていたけれど、こうして実際の試合として均して観るとまた少し漫画とは違った印象が生まれるようでおもしろかった。

回想と試合のカットバックはものすごく的確でバランスが良かったと思うけれど、欲を言えば後半はもっと強弱をつけてスピード感を出した方が良かったと思う。あと宮城母は個人的にはちょっと苦手かも。

映画を通して一番心に残ったのは、やはり井上雄彦先生の描く線の美しさとバスケ愛。自分が好きなスポーツをこんなに絵が上手い人が愛を持って動かしてくれたらどんなに幸せだろう、とバスケを好きな人が謎にうらやましくなった。

基本的には漫画の内容を脳内で補完しながら鑑賞したため、初見の人(とくにメンバーの関係性を知らない人)がどう感じるのかは全くわからない。


★★★★

*1:アニメ全然観てないので主題歌に全く思い入れない勢

ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー


想いは、受け継がれる。
第95回アカデミー衣装デザイン賞

原題:BLACK PANTHER: WAKANDA FOREVER
監督・脚本・原案:ライアン・クーグラー
脚本:ジョー・ロバート・コール
撮影:オータム・デュラルド・アーカポー
編集:マイケル・P・ショーバー、ケリー・ディクソン、ジェニファー・レイム
美術:ハンナ・ビークラー
衣装:ルース・カーター
音楽:ルドウィグ・ゴランソン
主題歌:リアーナ


ここのところMCUいちゃもんおばさんと化しているのですごく迷ったのですが、ブラックパンサーは自分にとって特別なヒーローなので、意を決して観に行きました。覚悟はしていたものの、いろんなきもちのせめぎ合いで、受け取り方がとても難しかった。


以下ネタバレ

続きを読む

グリーン・ナイト


怪物と戦う者は みずからも怪物とならぬよう心せよ

原題:THE GREEN KNIGHT
監督・脚本・編集:デヴィッド・ロウリー
撮影:アンドリュー・ドロス・パレルモ
美術:ジェイド・ヒーリー
衣装:マウゴシャ・トゥルジャンスカ
音楽:ダニエル・ハート


『A GHOST STORY』ですっかりファンになってしまったデヴィッド・ロウリー監督がA24と再タッグ!

友だちからのアドバイスで原典『ガウェイン卿と緑の騎士』のあらすじだけ頭に入れて鑑賞したのだけれど、これが良かった。この話を全く知らなかったら、「これなにのなに???」となっていただろう。知っていたらいたで、へんな映画だなぁーーーと笑ってしまった。

まずとにかく美徳ミッション全然クリアしない。(5つの美徳*1についてもあんまり教えてくれない。)一年準備期間があったのに全く成長しておらず、見返り要求したり、毒キノコ食べてゲロ吐いたり、嘘ついたり、射精したりと、かなり終盤までしょうもない……。なのにじっくり尺取るし、撮影や音楽は文句なしに幻想的で荘厳でうつくしい。バリー・コーガンはムダにいきいきしてるし。


結局冒頭にエセルが言う「善良なだけで十分」に回帰するのと、どんなにもがいても人間がたどり着けるのはそこくらいなのかも…と思わせるような描写が、監督の妙な達観とあたたかみを感じて、やっぱりこの監督好きだなぁと思いました。

正直メタファーを理解しきれたとは思えないし、原典自体に様々な解釈があるものなので、原典にくわしいほど解像度が上がって楽しい作品だろうなとは思う。


きつねは最高にかわいかったさ。


★★★★

*1:「寛大」「慈愛」「貞節」「礼節」「敬虔」

窓辺にて


ぜんぜんパーフェクトじゃない恋愛物語。
稲垣吾郎主演×今泉力哉監督、待望の完全オリジナル脚本。
第35回東京国際映画祭観客賞

監督・脚本:今泉力哉


現実逃避芸人のわたしですが、ここのところ毎日現実にぎゅうぎゅうに詰められており。友だちと会っている時はなるべく楽しい話をしたいたちなんですが、とにかく完全にエネルギーが枯渇していて弱音も吐きがち。「もう無理…つらい…ここで休んだらますますビハインドになるけどうーん……サボろう!」と決めて、せっかくなら余白のある映画で脳をゆるめようと思って観てきました。結果、この映画を選んで大正解だよ!(もちろん鑑賞後はパフェを食べたよ!)


「悩むことはぜいたく」ーまさに全主要人物が悩みを抱える「今泉映画」を味わうぜいたくさを堪能できるような作品だった。ふんだんに光を取り入れた撮影、うっとりするような長回しよ!

今泉印のすれちがう矢印の関係性に、今回「悩み相談」の噛み合わせが重なってくるのがたまらない。自分を見誤っていたり、うっすらお互いを見下しあったり、思わぬ人の正直すぎる感想が芯を食って相手を傷つけたり救ったり。

この映画は人を変えて何度も「あなたの気持ちは?あなたはどうしたいの?」という問いが繰り返されるけれど、みんななかなか即答できない。いっそ他人の気持ちの方がよくわかるし、自分の欲と向き合うのはしんどいことだ、と寄り添ってくれるような描き方が良かった。

その狂言回しとなる稲垣吾郎さんの存在感!まるで村上春樹作品の主人公のような浮遊感がぴったりだった。そもそも彼こそが「ラ・フランス」のモデルのように得たものに執着しない人であるのに、手に入れられない人の側に共感しているのがおもしろかった。彼もまた「書かない」裏に隠された気持ちを直視しないようにしているように見えるけれど、それがわかったとて自然に喪失を受け容れるのが、稲垣さん自身の存在感ともあいまってとても上品だなと思った。
その他の登場人物たちも結局お互いがそれほど影響を与えあうことなく、言語化したら嘘になってしまうような気持ちを抱えたままその後を生きているのがとても良かった。

スカートの主題歌も最高でした。
あと無限レモンの中で別れ話は地獄。


★★★★


以下、ネタバレ

続きを読む

MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない


また月曜日がやってくる

監督・脚本・編集:竹林亮
脚本:夏生さえり
編集:小林譲
撮影:幸前達之
助監督:徳山武昇
美術:三枝晃子、岡崎アミ
衣装:飯間千裕
劇中漫画:やじまり
音楽:大木嵩雄
主題歌:lyrical school

イムループもの見逃せない病なので……。タイムループ×日本の社畜文化!中盤まで本当にフレッシュで楽しかった。上申制にプレゼン、めちゃくちゃ笑ってしまった。


以下、ネタバレ

続きを読む