スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち

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映画史に残る偉大なアクションシーンの数々。
それは彼女たちの闘いの歴史。
数々の映画を彩ってきた名アクションシーンの裏側に迫る史上初のドキュメンタリー

原題:STUNTWOMEN THE UNTOLD HOLLYWOOD STORY
監督:エイプリル・ライト
製作総指揮:ミシェル・ロドリゲス


去年から「今年1本目はこれ!」と決めていました。なぜならわたしにとって「身体の利く女性」は末代までの憧れだから!
映画黎明期からの女性スタントの歩みをていねいに追い、若手がレジェンドにインタビューするスタイルで見せていくため、必然映画史・フェミニズム史を鳥瞰できる映画にもなっていて、とても興味深かった。

まずは、超特殊かつ超ハードな業界のプロフェッショナルならではの、命をかけた連帯感やリスペクトが熱かった。
逝ってしまった仲間に対する想い、そしてそれをくり返さないために現場でできることを、心に刻む様子の切実さが、真に胸に迫ってきた。

スタントウーマンたちの語り口を観ているうちに、「ユーモア」が必要な資質に挙げられるのに、しみじみ納得がいく。
日々体を鍛えぬき、危険ととなりあわせの彼女たちには、独特のエネルギーと明るさと覚悟が備わっていて、言動にそのオーラがもれ出ている感じ。観ていて気持ちがいい。「得意なスタント」を語る彼女たちの輝く顔といったら!得意なスタント、履歴書に書いてみたいよ!

ハリウッドスターのスタイルに合わせて極力やせていなければならない、露出の多い衣装で膝や肘にパッドを当てられない、高いヒールで思うように動けない、といった悩みも、言われてみればごもっともで、ニーズある一観客の身として申し訳なさを感じつつも、「でもスーパーかっこいいから!ごめん!」と尊さが増しました。
女性のアクション監督がいないことも今まであまり気にしたことがなかったので、意識なさすぎたな、と反省。

近い将来、世代や体型や人種の幅を広げたアクションや、アクション監督というポジションで、彼女たちの活躍の場が広がっていきますように。衣装の布も増量されますように!
あと、インタビューされてる男性監督がポール・フェイグとバーホーベンというところも、納得の人選でとてもよかった。


★★★★

2020年の音楽をふりかえる

ecrn awardに投稿しました!
https://ecrn.web.fc2.com/tally20.html


今年はなぜか5lackがめちゃくちゃ気分で、出産する瞬間も5lackのblacksmokecar MIXを聴いていました。
夫はなぜか舐達麻にどハマりし、家でも車でも隙あらばかけようとしてきました。
彼は今年、約20年間続けたバンドを解散することになり、それはわたしにとってもとてもショックなできごとだったのですが、「Live In Best Time」「生きてるうちにひたすらブチ上げるしかねえな」精神を忘れずに生きていきたいです。Tokyo Justice Side Hard Core Forever!



そんな今年の5枚はこちら!

ウィ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー

ウィ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー



R.Y.C

R.Y.C



Circles

Circles

  • アーティスト:Miller, Mac
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: CD



この景色も越へて

この景色も越へて

  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: MP3 ダウンロード







よかった曲。

  • BTS - Dynamite


  • BIM - KIRARI Deck (feat. G.RINA)


  • MAX - Blueberry Eyes (feat. SUGA of BTS)


  • Loose Fit - BLACK WATER


  • Dua Lipa - Break My Heart




  • 米津玄師 - 感電


  • GOT7 - Breath


  • BUDS MONTAGE - 舐達麻


去年のだけど、めっちゃ聴きました枠
  • Joji & Jackson Wang - Walking ft. Swae Lee & Major Lazer


娘お気に入り枠

「えーぞーけんのいーじーぶりーじー!」



今年は、映画も音楽もKの地力に感動しました。そろそろ韓国語勉強してみようかな……とか思ったりしています。

あとは、ここ5年ほど妊娠/出産/流産のローテで、なかなか自分のからだを自由に使えなかったのですが、2021こそやるぞやるぞ 肉体改造!筋肉面でもマソ山師匠に弟子入りしたい所存であります。

2020年の映画をふりかえる

2020年は、こんなご時世ですが第二子をDropしました……!
産前は、コロナ禍という特殊な状況で、出勤日数が減ったり、満員電車に乗らなくてすんだり、と思わぬラッキーも。ただ反面、産休に入ると、長女を保育園にあずけられなくなり、映画館に通いつめようと楽しみにしていた計画は丸つぶれ(姉になる彼女の心の準備をする時間ができて、結果的にはよかったのですが…)。

出産では、赤ちゃんガチャ最強のキラカード「手のかからないニコニコ長男」が爆誕。おかげで産後は、映画館で観たい作品をかなりの数観ることができました。
大作がのきなみ延期になったせいで、大好きな青春映画などの小品が比較的長くかかるようになり、とてもありがたかったです。(しかも青春映画の当たり年だった!)
今年はようやくNETFLIXにも加入し、一日6回の授乳の度に海外ドラマを観ていたので、それはそれははかどりました。

生活自体も赤子がいると必然「ステイホーム」になりがちだし、衛生面に気を遣うのもマスト事項なので、正直コロナとの相性はよかった(?)と思います。
夫もほぼリモートワークだったので、家事も分担できたし、今年はかなり楽したな……という印象。来年以降が勝負の年になりそうです。


では、今年もベスト10まで以下列記。


1.ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語



2.パラサイト 半地下の家族



3.ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから



4.はちどり



5.mid90s ミッドナインティーズ



6.ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー



7.ウルフウォーカー



8.スウィング・キッズ



9.37セカンズ



10.ミッドサマー




こうしてふり返ってみると、新進気鋭の監督作の当たり年でもあったんですね!こんなに長編デビュー作がずらりと並んだ年はなかなかないと思います。次回作が楽しみな監督ばかりだなあ。


いちばんよかったなと思う役者さんは、キム・セビョクさん a.k.a. ヨンジ先生 です。年末にシネマランキングを発表し合っているいつメンはわたし以外『はちどり』を一位に挙げていて、わたしも「そう…!一位…!」と大納得なのですが、なんかヨンジ先生に過剰にあこがれ、ウニ母に過剰に入れ込んでしまう自我を捨てたいのよね。余談ですが、今年はじめて美容院で髪を切った長女の裏テーマは、実はウニのボブなのです。(誰にも言ってない)

あとは、みんな納得フローレンス・ピュー!『若草物語』も『ミッドサマー』もなんて、無双すぎてこわい。
『幸せへのまわり道』を撮り、最高ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』の養母アルマ役を演じたマリエル・ヘラー監督もすごくファンになった人です。



来年はたぶんなかなか映画館行けないだろうな。配信には今年以上にお世話になりそうです。『ソウルフル・ワールド』も『マンダロリアン』も発狂するほど観たかったけれど、ディズニーのやり方がどうしても好きになれず、悶えたりしています。

幸せへのまわり道

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原題:A BEAUTIFUL DAY IN THE NEIGHBORHOOD
監督:マリエル・ヘラー
脚本:ミカ・フィッツァーマン=ブルー、ノア・ハープスター
撮影:ジョディ・リー・ライプス
編集:アン・マッケイブ
美術:ジェイド・ヒーリー
衣装:アージュン・バーシン
音楽:ネイト・ヘラー
原作:トム・ジュノー
Based on a True Story.


1979年生まれ(同世代)、『ある女流作家の罪と罰』
『クイーンズ・ギャンビット』の養母アルマ役、で、すっかりファンになってしまったマリエル・ヘラー監督。前作と同様、やさしくて誠実でチャーミングな作品。抜群にセンスが良いタイトルなのに、邦題にまったく活かされていないところまで前作同様でくやしい。この監督の作品は届くべき層になかなか届きづらいだろうな、と勝手に歯がゆい。

この監督は「許すこと」が撮りたいテーマの一つなのかなと思う。
「怒るのをやめると気分がいい」「僕の心をどうするか決めるのは僕」と感情をコントロールすることの大切さを説きながらも、感情を吐露することが問題を改善するキーになるのがとても良い。

実在する子ども向け番組の司会者フレッド・ロジャース氏をトム・ハンクスが演じており、彼を「現代のヒーロー」として雑誌に掲載するまでの話なのだが、この映画自体もきちんと「ヒーロー」映画になっているのがすごい。
人をていねいに扱い、話を傾聴し、結果的に人を癒す。それはちょっと異様に思えるほどのレベルに達しており、もはや狂人と紙一重なところもヒーローらしい。
ピアノ、スイミングなどのたゆまぬ「修行」シーンもきちんと描かれているし、とくにクライマックスの「第四の壁破り」はサラッととんでもない描写になっている。
キャスティングもトム・ハンクス*1以外考えられない。

育児にコミットしてこなかった父親との確執を抱えた男性*2が「そして父になる」映画でもあり、これを女性監督が撮っているところにも感動した。

監督インタビューがあまり見つけられず、どこまでの意図で計算して撮っているのかわからないけれど、今後も追いかけていきたい監督です。劇場で観てパンフレット買いたかったよ〜〜〜。
とりあえず、パペット片手に歌うトム・ハンクス*3の表情を押さえたシーンは意図したもので、妙に心に残るチャーミングさがあるし、私生活でもロンリー・アイランドのヨーマ・タッコンが夫だったり、と信頼できる人なのは確実かと!


★★★★

*1:監督が息子の知り合いだから承諾したらしいが

*2:これって現代男性の大多数ではないだろうか

*3:トム・ハンクスはパペットを撮られていると思っていた

燃ゆる女の肖像

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すべてを、この目に焼き付けたー。
18世紀、フランス。
望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描く女性画家。
生涯忘れ得ぬ痛みと喜びを人生に刻んだ恋を辿る追憶のラブストーリー。
第72回カンヌ国際映画祭脚本賞&クイア・パルム賞


英題:PORTRAIT OF A LADY ON FIRE
監督・脚本:セリーヌ・シアマ
撮影監督:クレア・マトン
編集:ジュリアン・ラシュレー
衣装:ドロテ・ギロー
オリジナルスコア:パラ・ワン、アーサー・シモニーニ
サウンド:ジュリアン・シカール、ヴァレリー・ディループ、ダニエル・ソブリノ


どのシーンもまるで絵画のような、(女優さんがまた!みんなそろって絵画顔!)「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」映画。

うつくしくて、繊細で、エモーショナル。
ギリシャ神話(オルフェウス)の引用によってより解釈に深みが増す点など、『君の名前で僕を呼んで』と共通点が多いと感じた(『君の名前で〜』の方は旧約聖書ユダヤ教ギリシャ文化になぞらえていたけれど)。

印象的な色彩と豊かな生活描写も似ていて、エロイーズの青、マリアンヌの赤、ソフィのオレンジのドレス。リキュールグラスに注がれたワインや薪のはぜる大きな暖炉、夜の合唱歌など、ひとつひとつのアイテムとその調和が、この世界への没入を誘われる魅力にあふれていた。


La Jeune Fille en Feu (Bande originale du film)


ただ、『君の名前は〜』があふれんばかりの日差しの中、せつないながらもどこかバカンスの多幸感と未来への希望をたたえていたのに比べ、こちらは吹きすさぶ海風の中暖炉の前で身を寄せ合うような性別と時代の重みが重量級だった。
ラスト二度の再会の経緯がまったく説明されないのもすさまじくて、ただただ「自分は生涯この相手を想いつづける」という覚悟と迫力が迫ってきた。

エロイーズ役のアデル・エネルが監督の元パートナー、赤ん坊のかたわらで堕胎、相手の股間に自分の姿が映った鏡(!)など、個人的な好みとしては、若干アートとエモが過ぎて胸やけする部分もあったけれど、とにかく「こんなにエモを焼きつけてしまって大丈夫ですか?(ありがとうございます……)」という気持ちになりました。


★★★★

羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来

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妖精のためにー
妖精とともにー

監督・脚本:MTJJ


とにかく中国産というところがフレッシュでとてもおもしろかった!
かっこいいとかきもちいいとか萌えるとか、アジア圏共通の感覚をつよく感じて心地よかった。
みんなで卓を囲む飲茶や画虎の店の造形、あざとすぎるムゲンのキャラ(料理下手・口下手・方向音痴、でバカ強!)など「うーん、…いい!」とほとんど反射的に和んでしまう。
一方で和製とはちがう世界観もおもしろくて、人間と妖精の比率(妖精の多さ!)、人間と妖精の共生のしかたなど、中国ならではのスケールの大きさを感じた。

物語も作画も緩急がすばらしかった。
アクションシーンのぬるぬるキビキビのきもちよさは言わずもがな。
ストーリーも超大国ならではの意義を感じる問題意識を掲げながら、ムゲンがシャオヘイの襟元をそっと直してあげたり、答えを押しつけないさりげなさも両立していて、奥ゆきがある。

そして、シャオヘイに子の可愛さが煮詰めてぶちこまれていてもう…!手足のぷにぷに感やムゲンに飛びついた時のフォルム!!懐柔されてしまった健気さや、3秒前のこと忘れてしまうような呑気さ、大人がハッとさせられるシンプルな柔軟さや聡明さは、ずっと見ていたいと思わせてくれるまぶしさでいっぱいでした。


★★★★

ウルフウォーカー

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英題:WOLFWALKERS
監督:トム・ムーア、ロス・スチュワート
脚本:ウィル・コリンズ
音楽:ブリュノ・クーレ、KiLA
楽曲:AURORA、マリア・ドイル・ケネディ、ソフィア・クレ


まずは、デザインのうつくしさに終始うっとり!
犬(狼)も植物もフォークロアも個人的に大好きなモチーフなので、エンドロールのイラスト一点一点が部屋に飾りたいほど、めちゃんこ好み!!

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この絵柄、タトゥーで入れたらかわいくないですか?

現実にある抑圧の苦しさをしっかり描きながらも、『もののけ姫』『おおかみこども〜』『ヒックとドラゴン』に通じるようなアニメーションの快楽に満ちあふれた異種交流譚になっていると感じた。
二人のヒロイン、ロビンとメーヴがほんとうに健気でかわいい、最高のシスターフッド
わたしもイッヌ(狼)たちの渦に包まれたい〜〜〜

版画調で直線な街と、水彩調で曲線な森の対比も、感覚的にとてもわかりやすく、自分の子どもにも観せたくなった。

安全を理由に子をコントロールしようとする父の姿は、自分も身に覚えがあって心苦しくなった。
とくに、ロビンが父の呪いの言葉をメーヴにもかけてしまうシーンは、かなり胸に刺さるものがあって、戒めになった。父が弱さを認めて解放される姿にすこし救われたけど。

境界を越えて、完全に「あちら側」へ行くラストにはすこしびっくりしたが、*1自分が少女だったら、このラストにはかなりあこがれるし、大人としては、このラストしか選べない現実をかえりみて、哀愁を感じた。


★★★★

*1:「結局お互いの世界に戻るけど、絆は永遠」的なラストがセオリーではないかと思う