2018年の映画をふりかえる

職場復帰&イヤイヤ期到来などで、寝オチを重ねた1年。
どーしても映画館で観たかった作品も逃してしまいがちでした。でもまぁそれでも行けてる方だし、残滓はアトロクでお焚き上げしていただいたりで、楽しくやってます。感謝です!

今年は個人的にズバ抜けたものがない代わりに、全体的にレベルが高くて、全然10位以内に入りきらず。うれしい日本へのラブレターと邦画の当たり年だったなぁ。

ベスト10まで以下列記。


1.レディ・プレイヤー1



2.レディ・バード



3.きみの鳥はうたえる



4.犬ヶ島



5.ちはやふる 結び



6.ウインド・リバー



7.ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル



8.寝ても覚めても



9.ファントム・スレッド



10.デッドプール2



『バーフバリ 王の凱旋』はもう神棚枠で……。
『君の名前で僕を呼んで』『ブリグズビー・ベア』
『若おかみは小学生!』がぁぁぁぁぁ!


いちばんよかったなと思う役者さんは、ティモシー・シャラメ石橋静河さん!たたずまい一発ですっかりファンになってしまいました。あとは、ダニエル・デイ・ルイスまだ引退しないで!ライアン・レイノルズだいすき!!

友だちと映画の話をするのって本当に楽しいし、やはり映画館で観るのとDVDで観るのとでは印象の残り方が全然違うので、来年もがんばって映画館かようぞー!

シュガー・ラッシュ オンライン

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ズートピア』のディズニーが贈る、夢の<<ネットの世界>>へ!

原題:RALPH BREAKS THE INTERNET: WRECK-IT RALPH 2
監督:リッチ・ムーア
監督・脚本:フィル・ジョンストン
脚本:パメラ・リボン
プロダクションデザイン:リー・ロフティス
アートディレクター・キャラクター:アミ・トンプソン
音楽:ヘンリー・ジャックマン
歌曲:アラン・メンケン


だいすきないつメンと みはし後 味坊鉄鍋荘前に。
女子同士で観たらさぞかし楽しかろうと期待していたし、実際プリンセスとの絡みとか共闘とか*1とても楽しかったんだけど。

なんだか全方面への気配りと情報の密度のせいで、結局こころに残らない作品になっているような気がしました。父の娘離れの話にも現代女性の自立の話にも、観るひとによっていかようにも受け取れる物語になっているけれど、不特定多数の人が何回も観ることを想定した物語より、たったひとりがたった一度観るためにつくられた物語のほうが強いってことあるよなぁ、などと考えてしまいました。

わたしは、引き続き『デートクレンジング』のことが念頭にあったため、推し(=友だち)が変わっていくことを応援することの尊さ、変わっていく属性に縛られずに関係を築いていく未来、あたりのメッセージが一番響きました。

デートクレンジング

デートクレンジング

ちなみに、いつメンとは毎年年末に各々の映画ベストを開陳しあっているのですが、今年は被らなさそうな順に一作ずつ挙げていく形式にしてみたら最高に楽しかった!
お互いの好みや映画評価がなんとなくわかるこそのゲーム性で大盛り上がり。酒がすすむ!
被りがでたのは『ウインド・リバー』『きみの鳥はうたえる』『アイ,トーニャ』でした。


★★★

*1:もっとじっくり見せてほしかった……

ボーダーライン ソルジャーズ・デイ

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このルール無き戦いに、終わりはあるのか―。
緊迫化する国境麻薬戦争、
極限の緊張感は次なる<境界>(ボーダー)へ

原題:SICARIO: DAY OF THE SOLDADO
監督:ステファノ・ソッリマ
脚本:テイラー・シェリダン
撮影監督:ダリウス・ウォルスキー
編集:マシュー・ニューマン
美術監督:ケヴィン・カヴァナー
衣装デザイン:デボラ・リン・スコット
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル


テイラー・シェリダン 確変モード!」「もうドローンが上昇するたびに『お会計して〜〜!!!』って毎回1800円払ってる気分になった…」「さらにあの『ドゥー…ン』ってなり続ける重低音でチャリンチャリーン…!」というのは、鑑賞済の友だちとのやりとり。
このキャッキャ感がもう前作とは全く毛色がちがっていて、好みはと言えば前作なんだけど、楽しかったのは今作かなぁ。

国家を巻き込む大きな話が、次第に非常に個人的な選択の話に収束していく流れは、すこし『スカイフォール』を思い出したりもしました。

自分が歯車として一体どの部分に加担しているのかもわからないまま、大きなシステムを動かしている人々の中で、覚悟を決めて、歯車を降りた人たちの話だと思いました。あつい!!


★★★★

ボヘミアン・ラプソディ


魂に響くラスト21分―俺たちは永遠になる
第94回アカデミー主演男優賞/編集賞

原題:BOHEMIAN RHAPSODY
監督:ブライアン・シンガー
脚本・原案:アンソニー・マクカーテン
原案:ピーター・モーガン
撮影監督:ニュートン・トーマス・サイジェル
編集:ジョン・オットマン
プロダクションデザイナー:アーロン・ヘイ
衣装デザイナー:ジュリアン・デイ
音楽総指揮:ブライアン・メイロジャー・テイラー


『オール・アイズ・オン・ミー』の時も思ったけど、クイーンの楽曲とフレディの人生だけで、そりゃあもう「映画」になってしまうわけで、ちょっと反則だよなー、と。

『ジャージー・ボーイズ』『ストレイト・アウタ・コンプトン』『ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男』など、良作な音楽伝記映画にやはり通じるものがあり、ブレイク前夜の昂揚感や世紀の名曲が生まれる瞬間、栄光の影の孤独がしっかり詰められていて良かったです。4人がスクラムを組む姿、泣かいでか!

とくにいいなと思ったのは、メアリーやバンドメンバーとの距離感。環境や立場が変わっても、変に遠慮したり、哀れんだり、甘やかしすぎたりすることなく、それでいて肝心な時には助け、許し、愛してくれる。常に自立した存在としてフレディと対等に対峙している姿がとてもすてきだった。

最近『デートクレンジング』を読んで、「友だち=推し」「変わっていく属性に縛られずに関係を築いていく」ことについて考えていたのだけど、この映画を観て友だちを「家族」と呼べる形は、もうすぐそこまで来ている未来だなと思いました。いいなぁ。


★★★★

若おかみは小学生!

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春の屋には、たくさんの出会いが待っていた!
両親を亡くした<おっこ>が修行するのは、
不思議な仲間たちがいるおばあちゃんの宿

監督:高坂希太郎
脚本:吉田玲子
作画監督:廣田俊輔
美術監督:渡邊洋一
撮影監督:加藤道哉
編集:瀬山武司
音楽:鈴木慶一
原作:令丈ヒロ子
絵:亜沙美


夫の誕生日を祝うため有休。二人して『アンダー・ザ・シルバーレイク』を観るのを楽しみにしていたのだけれど、時間が合わず。各所絶賛を受けておそるおそる夫にプレゼンしてみたところ、意外にも「逆に興味がわいた!」と言うので行ってきました。結果、めったに映画で泣かない夫*1も落涙。「今年ベストかもしれない…」とまでのたまっていました。

わたしは、夫へのプレゼンのために、わりと事前情報を入れていて、「おっこが良い子すぎる」とか「自由意志をつぶして大人の都合で動いている」という意見を危惧していたのですが、そんな風に見えなくてほっとしました。

これは子どもに対してどこまで大人がケアできるか、子どもの成長に周りの大人がどこまで影響を与えるか、ということに対する意識の差が、かなり観方に影響する作品なのかも。

個人的には、衣食住の環境さえ整えてあげれば、子どもは勝手に成長していく、と思っていてむしろ大人がそれをコントロールできるとは思えない。それほど子どもがもともと持っている個性や生命力はすさまじいものだと、新米母のわたしは日々実感しているし、勝手に信用してしまっている。
たとえその子ががんばりすぎてしまったとしても、そうすることでしか到達できない景色はもちろんあるし、子ども時代にしかきかない無茶やがんばりもある。どんなに言って聞かせてもがんばらない子やタイミングもある。その影響が大人になった時に出てきたとしても、それはその時また自分で向き合っていけばいいんじゃないかなと思います。

このへんのバランスがとてもていねいだなと思うのですが、たしかに誰もおっこを迎えに来ないし、行きがかりで若おかみになってしまうけれど、祖母にはきちんと逡巡する様子が描かれているし、誰も(幽霊は別として)「がんばれ!」とは言わない。
大切なひとを亡くした時、とりあえず手を動かして誰かに必要とされ喜んでもらうことで気を紛らわし、まずは生活を続けていくこと―。適性もあったおかみ業はおっこの支えになっているし、その上であかねくんと喧嘩したり、車で過呼吸を起こしたり、グローリーさんと豪遊したり(最高!)、という流れは、ものすごく健全に大切な人の死と向き合うステップを踏んでいるように見える。そのまっすぐで生命力あふれる姿は、決して強制されているようには見えない。なにしろスーパーかっこいい真月ちゃんというライバルのおかげで、おっこの良い子ぶりが霞む(笑)

生と死の世界がシームレスなのも、とてもよかった。子どもってこういう風に世界が見えている時期がきっとあるし、同時におっこの「死を受け容れる力」の推移が可視化されていて、すごい表現だなーと思いました。おかげで夫は鑑賞中「シックス・センス オチか?」とヒヤヒヤしていたらしいけど。

クライマックス、自分が死なせた相手の子の現況を押さえていない加害者はやはり腹立たしいし、それを受け入れるのは酷な話だけれど、おっこのせりふにはとりあえずおもてなしに徹するというニュアンスはあるものの、個人的な赦しについてはまだ先になるのかな、というバランスがあって、このあたりもほっとする。赦さなくてもいいんだよ。

ラストは思い出し泣きできるほど。ライバルと去りゆくイマジナリーフレンドと舞うのを、亡くした人と出会った人が見守っている。「ずっとこの時が続けばいいのに…」という多幸感とせつなさ、でもはっきりまぶしい成長と未来が見える。大傑作!


★★★★

*1:泣いた映画は『エレファント・マン』と『仁義なき戦い

クレイジー・リッチ!

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私の彼はスーパーセレブ
愛してるだけじゃダメみたい
全世界の女性が共感!
“本当の幸せ”を見つけるためのゴールイン・ムービー!

原題:CRAZY RICH ASIANS
監督:ジョン・M・チュウ
脚本:ピーター・チアレッリ / アデル・リム
撮影:ヴァーニャ・ツァーンユル
編集:マイロン・カースタイン
美術:ネルソン・コーツ
衣装:メアリー・フォークト
音楽:ブライアン・タイラー
原作・製作総指揮:ケヴィン・クワン


ブコメジュラシック・パークや〜(?)王道かつゴージャス。ヒロイン像に知性や自立、ガッツが求められているあたり、時代を感じました。

基本的には楽しかったのですが、最高ポイントとノレなかったポイントがわりとはっきりある作品。主人公をもっと好きになれたらよかったんだけど…。ヒロイン親子よりミシェル・ヨー親子やペク・リン一家の方が好感もてたし、魅力的に見えてしまったんだよね……。

以下、列記。

△最高ポイント
-シンガポール屋台ごはん
-ゴッドファーザー オマージュ?w
-Kina Grannisの"Can't help falling Love"
-アストリッドの同伴者
-ソノヤ・ミズノの晴れ姿
-雀牌を通して女たちはわかり合ったのだった
-ニックのプロポーズシーン
-Awkwafina!

▼冷めポイント
-とにかくヒロインの服装が絶妙にダサい… 友だちになりたくないレベルでダサい……
-「頭の中服とバッグのことばっかり」の子にだって五分の魂があるはず。その価値観を見下すひとは見下されてもしかたないのでは??
-出自のエクスキューズ要らないのでは?父親がクズだったとしてもレイチェルの価値に変わりはないって話じゃないのか??


しかし、やいのやいの言いましたが、ケビン・クワンとミシェル・ヨーの気骨だけでも泣ける映画ではあります。ありがたや。

realsound.jp


★★★

ちはやふる -結び-

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絶対に忘れない―
今、この瞬間が私たちの全て。

監督・脚本:小泉徳宏
撮影:柳田裕男
編集:穗垣順之助
美術:五辻圭
スタイリスト:新崎みのり
音楽:横山克
主題歌:Perfume「無限未来」
原作:末次由紀


非の打ち所のない完璧な完結編。みんなが観たかった太一の物語。監督、わたしと同学年で同学科なのです。ふるえるわ。

甘酢乞食のわたしがこの作品に心を打たれるのは当たり前なのですが、それだけでは済まされないほど後半はただただ「え?本当に終わっちゃうの?こいつらに会えなくなっちゃうの?」ということが、さみしくてせつなくて涙が出てきてしまう始末でした。千早が太一にたすきを渡すシーンではド号泣。

悠久の時の流れを感じさせる「かるた」に青春という瞬間全部をささげる登場人物たち。3作通して今しか真空パックできないような旬のキャストの成長やきらめきも重なって、なんだか本当に時間を超えてしまうような映画でした。周防名人の「一瞬を永遠にする力が、人間にはあるんだ」という言葉がまさに具現化されていると思う。
自分の情熱を賭けたことが誰かに「継承」されていくこと、今の自分が放った閃光が、将来への道筋をほの明るく照らし、また誰かの遠い未来にもつながっていくかもしれないこと。ほんとうにうつくしいことだし、生きる勇気がわくことだと思いました。


★★★★